『勇気爆発バーンブレイバーン』は“ロボットアニメ”をアップデートする一作になる予感

 そんなインパクトあふれる展開は第2話でも衰えることなく続く。窮地は脱したものの多くの戦力と仲間を失い(倉庫に弔うように並べられた多数の遺体袋のシーンがもたらす前話ラストの高揚感とのギャップが秀逸)、打ちひしがれる各国軍。そんな彼らとの会議に参加して(半壊した会議室の外に鎮座して会議に参加する巨大ロボという絵面のギャップもこの作品ならでは)敵であるデスドライヴズの情報などを伝えるブレイバーンだったが、テンションが上がると一方的にイサミへの想いをハイテンションに語り出し、まったく会話が成立しない。

 そして水面下ではブレイバーンとデスドライヴズが他国の秘密兵器ではという疑念を抱く各国は、自分たちを救ったヒーローのはずのイサミから真実を引き出そうと拷問にかける。味方からは疑われ、得体の知れないロボットから一方的に好意(?)を寄せられて、再度の敵襲に立ち向かうべく嫌々ながらブレイバーンに乗り込まされるなど、イサミの心はどんどん打ちのめされていく……もはや第1話前半でのクールなイメージはどこへやらだ。

「俺は赤や青のぴっちりスーツに身を包んだマッチョメンになりたかった。けど、そんなものはコミックや映画の中にしかいないと、ずっと自分に言い聞かせてきた」

 ブレイバーンのデザインやある意味ベタなテーマソングなどのインパクトに隠れてしまっているが、ルイスが第1話冒頭で語るモノローグのように、作品世界自体は人型兵器が一般化している以外は極めて現実に近いリアリティラインのものだ。そこに「スーパーロボット」「ヒーロー」の姿をした異分子が突然出現して関わってくる今作は、所謂「ファーストコンタクト」の物語を直球のロボットアニメとして描こうとしているように感じられた。

 ファーストコンタクトを扱ったロボットアニメは過去にも『伝説巨神イデオン』をはじめ様々な作品があるが、多くの物語の主軸は接触から生じる対立や戦争だった。今作は勇者シリーズに近い主人公とロボットというパーソナルな関わりを軸にしつつ、そのオーバーテクノロジーな存在が世界にどう受け入れていくかという、ハリウッド版『トランスフォーマー』や2017年放映のSFアニメ『正解するカド』的な方向に進むのではないかと予想する。

 そしてドラマ的な注目ポイントはブレイバーンと主人公イサミをはじめとする人間たちとの関係だろう。「勇者シリーズ」では主人公の多くが子どもだったので、異分子であるロボットたちを素直に受け入れて友情を育むことができた。しかし、イサミは常識的で堅物な大人の自衛官だし、他のキャラクターもヒーローに憧れるルイス以外はブレイバーンに信頼よりも疑念を抱く真っ当な大人たちだ。

 そして肝心のブレイバーンも人の話をあまり聞かず、イサミに対する異様な執着心を包み隠さずさらけ出してさらなる疑念を積み重ねる怪しい存在だ。人間的な常識が通じず、戦場で駄々をこねるようにイサミの名を呼び続けるなど、見た目こそ勇者ロボだがパーソナリティ的には古くは『オバケのQ太郎』や『がんばれロボコン』、近作では『僕のロボ子』のような「日常への闖入者」ジャンルのキャラクターに近い。

 こんな常識の通じない存在に人類の命運を賭けざるを得ない状況で、人間たちはどう動くのか? そして唯一積極的にブレイバーンを受け入れようとするも「生理的に無理」と拒絶され、第2話ラストで敵ロボット・スペルビアから切り離されたらしき謎の少女と出会った「ヒーローになりたかった男」ルイスがどう動くのか? そんな人間サイドの対立や葛藤のドラマも期待できそうだ。

 そんな異色のロボットアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』が狙っているのは、時代にマッチした「ロボットアニメ」というジャンルのアップデートではないだろうか。

 ロボットアニメ黎明期に見られた、当たり前のようにスーパーロボットがいる世界を舞台にした作品は現在ではほとんど無くなった。人型兵器としてのロボットが主流となる所謂「リアルロボット」系作品も、『ガンダム』シリーズ以外に存在感を示す新作がなかなか現れないのが現在のロボットアニメ界隈。『ウルトラマン』や『仮面ライダー』が時代の空気を取り入れながらニュージェネレーションとしてシリーズを重ねているように、『勇気爆発バーンブレイバーン』には袋小路に入ったロボットアニメそのものを豪快にスクラップ&ビルドするようなパワーが感じられる。

 公式サイトの解説では「各々の願う最上の『死』を与えてくれる存在を求めて銀河をさまよっている」とされる敵・デスドライヴズの目的は本当にそれなのか? 立ち向かえる戦力がブレイバーンのみの人類と、得体の知れない好意でせまってくるブレイバーンを拒絶しながらも、人類のために乗るしかないイサミの運命は? そしてブレイバーンはいったい何者なのか?

 ロボットアニメのお約束を令和ならではの感覚で真っ向から描こうとしている『勇気爆発バーンブレイバーン』は、ぜひリアルタイムで追いかけて驚きに身を委ねながら、その顛末を見届けたくなる注目の一作だ。

■放送情報
『勇気爆発バーンブレイバーン』
TBS系にて、毎週木曜23:56〜24:26放送
※放送日時は予告なく変更になる可能性あり
企画:Cygames
監督・ブレイバーンデザイン:大張正己
シリーズ構成:小柳啓伍
キャラクターデザイン原案:かも仮面
キャラクターデザイン:本村晃一
メカニカルデザイン:MORUGA、桜、水樹、石垣純哉、山根理宏、鈴木勘太
プロダクションデザイン:寺岡賢司
総作画監督:本村晃一、宇良隆太、小菅和久、小森篤
副監督:重原克也
美術監督:橋本巧(草薙)
色彩設計:岡崎菜々子
3DCGディレクター:中野祥典
撮影監督:林賢太
編集:三嶋章紀
音楽:渡邊崇
音響監督:大張正己
音響効果:小山恭正
音響制作:dugout
アニメーション制作:CygamesPictures
キャスト:鈴木崚汰、阿座上洋平、鈴村健一、会沢紗弥、宮本侑芽、加隈亜衣、前田佳織里、藤井ゆきよ、森なな子、三宅健太、志村知幸
 ©「勇気爆発バーンブレイバーン」製作委員会
公式サイト:https://bangbravern.com/
公式X(旧Twitter ):https://twitter.com/bangbravern/ 

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