『ブギウギ』草彅剛×水上恒司の化学反応に注目 スズ子を愛する2人の男がついに対面

『ブギウギ』草彅剛×水上恒司の化学反応に注目

 大好きな歌か、愛する人か。『ブギウギ』(NHK総合)第17週では、スズ子(趣里)がその二択を迫られる中、羽鳥善一(草彅剛)が突然家にやってきて、愛助(水上恒司)と対面を果たす。2人はかなり前から互いを認識こそすれど、直接顔を合わせるのは意外にも今回が初。福来スズ子を愛する者同士、けれど恋のライバルではないという面白い関係の彼らがどんな会話を繰り広げるのか見ものだ。

 早いもので、あと2カ月ほどで最終回を迎える本作。戦後の焼け野原から復興を遂げる日本で、スズ子が“ブギの女王”となる日も刻一刻と近づいている。そんな中、タナケン(生瀬勝久)の主演舞台で畑違いの女優業に挑んだスズ子。予想外の展開に調子を合わせようとするスズ子から“おかしみ”が溢れ出した。

 歌手としてもスズ子の最大の魅力である“可笑しみ”。それを最も引き出すのがグルーヴを大切にするジャズであると誰より先に気づいたのが善一だ。最初はジャズ特有のノリ=スウィングが分からず、歌の出だしばかり500回以上もノックさせられたスズ子。何がダメなのかを善一は一向に言語化してくれず、ある時、その怒りを歌に込めた。それこそが善一の求めているものであり、あの瞬間にブギの女王・福来スズ子はほぼ完成されたといっても過言ではない。

 スズ子と善一の師弟コンビの誕生から、作中ではもうすぐ10年が経とうとしている。今一度思い返したいのが、スズ子が初めて失恋した時に善一がかけた言葉だ。

「これからもきっと人生はいろいろある。まだまだこんなもんじゃない。うれしいことも辛いこともたくさんあるよ。だからうれしいときは気持ちよく歌って、辛いときはやけのやんぱちで歌う。(中略)僕たちはそうやって生きていくんだよ」

 まだまだこんなもんじゃない、本当にその通りだった。最愛の母を病気で失い、戦争に表現の自由と弟の命まで奪われたスズ子。その度に善一はスズ子のために作った新しい歌を差し出してきた。それは、「福来くん、歌うんだよ」という無言のメッセージでもある。善一はスズ子に何かを強要したことはないが、意外にスパルタで、相手に有無を言わせない強引さがある。だけど、スズ子はその強引さに救われてきた。スズ子の人生は普通の人なら耐えきれないほどに波乱万丈だ。それなのに周りの人間にばかり気を配って、自分を労わるのが少し苦手なスズ子にとって、怒りや哀しみ、喜びといった感情を歌に乗せて思いのままに吐き出させてくれる善一の曲は不可欠。善一にとっても、スズ子はピアノに向かう原動力であり、互いに切っても切り離せない存在である。

 ということは、だ。「大好きな歌か、愛する人か」という選択は、「善一か、愛助か」というふうに言い換えられなくもない。スズ子が歌手を止めるということは、善一は作曲家として片翼をもがれるようなものだから。なにより、それを一番望んでいないのが愛助なのである。

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