山田杏奈が来るところまで来た! 実写版『ゴールデンカムイ』アシリパ役に相応しい実力

 たとえば、2023年に公開された『山女』での彼女の役どころがまさにそうだ。同作の舞台は、大飢饉に襲われた18世紀末の東北の寒村。山田が演じた主人公・凛は、先代の罪を負った家の娘であり、村の者たちから蔑まれながら生きている人物だった。やがて彼女は父の犯した罪を被り、入ることを禁じられていた山奥へ。そこで凛は本来の自分らしさや人間らしさを知ることになる。

 観ていて息の詰まる作品であり、今日にも通じる多くのテーマ性を内包した作品である。これを見事に背負ってみせたところに、山田の俳優としての器の大きさやポテンシャルの底知れなさを感じたのだ。

山田杏奈が考える、役者を続けていく上で大切なこと 「我慢してまでやることはない」

2013年に女優デビューを果たしてから10年。映画やドラマなど数多くの作品に出演し、その存在感を発揮してきた山田杏奈が、「ひとり…

 さらに振り返ってみれば、『ミスミソウ』(2018年)や『ひらいて』(2021年)、『彼女が好きなものは』(2021年)など、数々の作品を主役級のポジションで山田は率いてきた。いずれも切実なテーマ性を持ち、鑑賞者の価値観の変革を促す作品である。こうしたキャリアを経てきた彼女ならば、難役だといえるアシリパを演じきり、『ゴールデンカムイ』というビッグタイトルを主演の山﨑たちと背負えるはずだと思っていたのである。

 実際、彼女のアシリパとしてのポジショニングは的確だ。主人公・杉元と交流をしていくうちに柔らかくなっていく心のありようは、微細な語調の変化で表現し、その表情も初登場時と終盤では大きく違う。柔和なものへとなっている。いっぽう、敵対する者には鋭い視線を向けて屹然とした態度で挑み、コメディリリーフ的な役どころの者との掛け合いも軽快だ。原作で親しんでいたあのアシリパが、目の前にいる感覚になる。山田が立ち上げたチャーミングなアシリパ像は、人々に広く愛されていくに違いない。

 アシリパは自らのことを「新しいアイヌの女」だという。おそらくこのビッグタイトルはシリーズ化していくはずだから、俳優・山田杏奈はこれまで以上に多くの鑑賞者たちに対して、価値観の変革を促す存在となっていくことになる。そう、彼女は来るところまで来たのだ。

※アシリパの「リ」は小文字が正式表記。

■公開情報
『ゴールデンカムイ』
全国公開中
出演:山﨑賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、工藤阿須加、栁俊太郎、泉澤祐希、矢本悠馬、大谷亮平、勝矢、高畑充希、木場勝己、大方斐紗子、秋辺デボ、マキタスポーツ、玉木宏、舘ひろし
原作:野田サトル『ゴールデンカムイ』(集英社ヤングジャンプ コミックス刊)
監督:久保茂昭
脚本:黒岩勉
音楽:やまだ豊
アイヌ監修:中川裕、秋辺デボ
製作幹事:WOWOW・集英社
制作プロダクション:CREDEUS
配給:東宝
©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
公式サイト:kamuy-movie.com
公式X(旧Twitter):@kamuy_movie
公式Instagram:@kamuy_movie

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