波瑠はわずかな“違和感”を見逃さない 視聴者の声を代弁する等身大のヒロイン像

波瑠はわずかな“違和感”を見逃さない

 松本清張ドラマスペシャル『ガラスの城』が、1月4日21時よりテレビ朝日系で放送される。主人公の大手商社勤務の一般職社員・的場郁子役を演じるのは波瑠だ。

 波瑠といえば、2023年4月期ドラマ『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)で主演を務め、続いて7月期ドラマ『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)でもキーパーソン役を演じ、2クール連続での「水10」枠出演が話題になった。

 『わたしのお嫁くん』では大手家電メーカーで働く営業部エースながら家事能力ゼロという主人公・速見穂香役を好演。仕事を円滑に進めるために発揮している気遣いを全て“家庭的”で“良いお嫁さん候補”という安易なワードに結び付けられる違和感や窮屈さに引っ掛かりを覚える役どころを自然に演じ、共感を集めた。波瑠はこういった“違和感”を見逃せないキャラクターを演じるのが本当に上手い。日々小さな引っ掛かりを覚えながらも、それが蓄積されていきモヤモヤを抱える。そのモヤモヤを時に表面上は受け流しながら、それでも飲み下せないラインをより意識することになる。そんなことさら“意識高い系”でもない女性の、日常に転がる葛藤をリアルに見せてくれる。

波瑠×高杉真宙『わたしのお嫁くん』が気付かせてくれた、日々の生活と重なる多くの問題

「物に定位置を決める」「床の上にものを置かない」「ちょっとの掃除を習慣にする」などなど、部屋をきれいに片付けるコツはたくさんある…

 仕事ができるバリキャリ役を演じても、「仕事一筋」な一切の隙のない完全無欠な仕上がりにはならず、こちらに共感できる余地をしっかり与えてくれる“悩める一人”になるのは、波瑠の正直で誤魔化しのないお芝居だからこそ為せる業だろう。

 また本作では、そんな穂香の秘密を知った同じく営業部の後輩で家事能力抜群の山本知博(高杉真宙)との不思議な共同生活が始まるが、波瑠扮する穂香は嘘のつけない性格ゆえ、無駄に相手に気を持たせるような優柔不断な女性には全く映らない。徐々に見直されてきてはいるものの、いまだに根強く蔓延るジェンダーロールや家族のカタチについて、世間の常識と自分たちの生活スタイルをすり合わせていく様を特別なこととしてではなく、当たり前のこととして見せてくれた。

 また2人の恋愛を邪魔する赤嶺(仁村紗和)は山本に好意があるのではなく、穂香を熱烈に推す大ファンだということが明かされるが、それも波瑠演じる穂香の飾らない自然体の魅力や分け隔てなさゆえのことだろうと大いに納得してしまう。

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