『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』から考える、原作のあるアニメーション映画の意義

 『週刊少年ジャンプ』のアニメ化作品がアニメーション界、映画界で大きな反響を呼んでいるなか、WEB版の『少年ジャンプ+』で連載中の『SPY×FAMILY』も大ヒットを記録している。さまざまな企業とのコラボ商品も充実していて、街に出ると『ちいかわ』同様にキャラクターたちの姿を目にする。連載当初は、ここまでのヒット作になるとは、送り出す側も予想していなかったのかもしれない。

 認知度を一気に高めたのは、TVアニメシリーズの存在も大きかった。映画化企画が進められるのも至極当然の流れといったところだろう。そうやって公開された『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』は、ねらい通りに興行成績ランキング初登場首位を獲得し、観客動員数を伸ばしている。

 さて、そんな『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の内容はどうだったのか。ここでは、作品の描写や製作意図などを検証しながら、原作のあるアニメーション映画の意義について考えていきたい。

 冷戦時代の東西ドイツを思わせる架空の国を舞台にした本シリーズ。コードネーム「黄昏」と呼ばれる西側の凄腕スパイ、ロイド・フォージャーが東側に潜入し、ターゲットに近づくミッションを完遂するために偽装家族を作り上げるというのが、基本的な設定だ。特徴的なのは、妻となったヨルが東国の秘密組織に所属する殺し屋であること。この擬似夫妻は、お互いが危険な仕事に従事する陰の存在であることに気づいていない。それを知っているのは、“心を読める”という超自然的な能力を持つ、二人の養子のアーニャなのである。本作は、初めての映画版ということもあり、この設定を冒頭の時間を割いて律儀に説明してくれる。

 夫妻がお互いに闇のプロフェッショナルだということを知らないという設定は、ハリウッド映画『Mr.&Mrs. スミス』(2005年)に近く、親が諜報組織のエージェントだったという展開は、ロバート・ロドリゲス監督の『スパイキッズ』シリーズを思わせる。そこに『ハリー・ポッター』シリーズのようなイギリスの学園や風俗の要素をミックスし、日本の漫画作品として、よりポップなものに変換されているというのが、本シリーズに対する印象だ。

 映画ファンの立場からすると、既存の映画作品の設定やストーリーに近いことで、楽しみ方が分かりやすいともいえる。海外での人気の高さも、その視点から考えると納得できるところだ。面白いのは、スパイ映画の要素を利用している本シリーズが、漫画、TVアニメを経由して、また映画へと還流してきたという点である。

 そんな映画版である本作『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』のストーリーは、オリジナル脚本でありながら、TVアニメSeason2において、5話ほどをかけて映画1本分の尺で描かれた「豪華客船編」に、かなり構造が似ている。おそらく、このフォーマットを利用すれば、いくらでも映画用のエピソードを用意できるだろう。

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