『どうする家康』『レジェバタ』『首』 戦国三英傑&明智光秀を演じた三者三様の俳優たち

明智光秀:酒向芳、宮沢氷魚、西島秀俊

『どうする家康』明智光秀(酒向芳)

 さらに、もうひとり。「信長」を討つことによって、長期的には「秀吉」が天下人となるきっかけを作り、短期的には「家康」を「伊賀越え」の窮地に陥れたキーマン「明智光秀」についても、ひと通り見ておきたい。『どうする家康』では60代の酒向芳が、『レジェバタ』では20代の宮沢氷魚が、『首』では50代の西島秀俊が、それぞれ「光秀」を演じていた(諸説あるけれど、光秀の没年は50代半ば頃と言われている)。

 先ほどの「保守」と「革新」の話ではないけれど、大河ドラマ『麒麟がくる』で長谷川博己が演じていた光秀を「革新」とするならば、酒向芳の「光秀」は、やや「保守」ではありつつも、従来通りの「憎まれ役」として、非常に良かったのではないだろうか(「くそたわけ!」)。その一方で、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の印象もあってか、近頃めっきり「受け」の芝居が板についてきたような気もする西島秀俊の「光秀」も、遠藤憲一演じる「荒木村重」との深い関係性については知らなかったけれど(笑)、これまでの「光秀」とは違う、新たなイメージを生み出していたように思う。ただ、ここで改めて触れておきたいのは、『レジェバタ』で宮沢氷魚が演じた「光秀」の鮮烈な佇まいなのだった。「信長」よりも年上という史実を大胆に無視しつつも、残虐非道な「信長」の「負のパワー」に引き付けられていたがゆえに、それが失われたとき、自らの手でその生命を……という解釈のユニークさは、「この光秀のスピンオフを観てみたい!」と思わせるぐらい、ゾクゾクするような冷たい魅力を打ち放っていた。

 ということで、「信長」「秀吉」「家康」、そして「光秀」について見てきたけれど、それ以外の人物で印象に残ったのは、『どうする家康』で「石川数正」を演じた松重豊、「お市」と「茶々(淀の方)」の二役を演じた北川景子、「豊臣秀頼」を演じた作間龍斗あたりだろうか。クセの強い人物ばかりが次々登場する『首』では、秀吉の弟「秀長」を演じた大森南朋と「黒田官兵衛」を演じた浅野忠信のコンビが良かった。この2人が、ビートたけし演じる「秀吉」と繰り広げる、とぼけたコントのようなやりとりは、実は「R-15+」の血みどろ愛憎暴力劇である『首』の世界の中で、絶妙な笑いどころになっていた。その無体な「オチ」も含めて。『どうする家康』では、徳川四天王のひとり「酒井忠次」を演じていた大森だけど、個人的には「えびすくい」のような「動」の笑いよりも、このような「静」の笑いのほうが合っているように思った。

■放送情報
『どうする家康』総集編
NHK総合、BSP4Kにて放送
第1章:13:05〜14:14
第2章:14:14〜15:24
第3章:15:29〜16:39
第4章:16:39〜17:49
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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