平井伊都子の「2023年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 ディズニープラスの“傍流”が躍進
ここ数年の癒し担当『テッド・ラッソ』もとうとう完結してしまったが、不思議と喪失感はない。ホリデーコンサート特番『ハンナ・ワディンガム:ホーム・フォー・クリスマス』(Apple TV+)で、レベッカ役のワディンガムのもとに『テッド・ラッソ』の出演者たちが集う。この粋なリユニオンが「テッド・ラッソ流」なのだろう。
『ジューリー・デューティ』と『リハーサル』は、リアリティTV派生のモキュメンタリー風ドラマ。陪審員裁判をまるごと作り上げ(ジェームス・マースデンが本人役で出演)、たった1人の対象者を騙す『ジューリー・デューティー』と、人生の一大事を予行演習する『リハーサル』。どちらにも共通しているのは、新たな笑いを探求するために巨額の予算と手間をかけるクレイジーさ。『リハーサル』のネイサン・フィールダーは新作の『The Curse(原題)』でも、リアリティTVに出演する夫婦(フィールダー&エマ・ストーン)とディレクター(ベニー・サフディ)による居心地の悪い笑いを作り出している。
まさにこの原稿を書いている最中に飛び込んできた“Warnermount”(ワーナーとパラマウントの買収合併)のニュースは、このリストの1位と10位が一緒になったような案件。Apple TV+の看板ドラマ『ザ・モーニングショー』は、ネットワークTVの報道局を舞台に、パンデミックや合衆国議事堂襲撃事件など実在の事件を組み込み、S1で#MeTooムーブメント、S2はキャンセルカルチャー、S3では企業買収とアメリカの今を映し出している。巨大メディア企業の継承問題を、ドラマ史上最も好感度の低いきょうだいと周辺人物が欺き合う『メディア王』は、脚本・演出・演技・音楽・撮影の全てが高みに向かって研磨し合っているような神々しさがあった。そんなドラマを日本でもリアルタイムで観られた2023年は、幸せな年だったと言えるのではないだろうか。
■配信情報
『メディア王~華麗なる一族~ シーズン4』
U-NEXTにて見放題で独占配信中
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