なんやかやで前後の脈絡を飛ばしても要所要所でストーリーがつながっている『トクメイ！』は、刑事ドラマのエッセンスをうまく取り込んでいる。捜査と並行して裏金庫を探すため、間近に控える予算会議に向けて円は須賀（佐藤二朗）から知恵を借りる。まさか信頼する元上司が、組織の転覆を企てる集団の首魁であるとは知らずに。

　第10話はバラバラだったパズルのピースが組み合って物語が動き出す瞬間が描かれていて、ここまで観てきた視聴者は感慨深いものがあっただろう。1話の中に犯人の正体明かしが2回あるという斬新な構成にうなった。ここに至るまで徹底的にゆるいドラマと思わせ、気配すら漂わせなかったのはさすがとしか言いようがない。偶然にも、本コラムでは第4話の時点で脅迫者Xの正体が須賀ではないかと考察していた（参考：『トクメイ！』“伏兵”佐藤二朗が橋本環奈に代わって事件解決　徳重聡が画面の情報量を独占）。そんな筆者にとっても、この段階でXが須賀本人と知らされたのはまさかという意外さがあり、制作陣の深謀遠慮に舌を巻いた次第。あとは不運すぎる円のオチがあれば完璧である。

■放送情報
『トクメイ！警視庁特別会計係』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演：橋本環奈、沢村一樹、松本まりか、JP、前田拳太郎、徳重聡、佐藤二朗ほか
脚本：荒木哉仁、皐月彩
演出：城宝秀則、光野道夫、湯浅真
プロデューサー：近藤匡、小林宙
音楽：大友良英
主題歌：SEVENTEEN「今 -明日 世界が終わっても-」（HYBE JAPAN）
オープニングテーマ：LEEVELLES 「地獄の沙汰も愛次第」（ユニバーサルミュージック／Virgin Music）
制作著作：カンテレ、共同テレビジョン
©︎カンテレ
公式サイト：https://www.ktv.jp/tokumei/
公式X（旧Twitter）：@tokumei_ktv