2023年『紅白歌合戦』は“アニメ祭り”の予感 J-POPとの蜜月関係が世界的ヒットの鍵に?

 2023年の『第74回NHK紅白歌合戦』はアニメ業界にとって象徴的な出来事となるかもしれない。

 出演アーティスト44組のうち14組が直近でアニメ主題歌を歌っているアーティストであり、まるで「アニメ祭り」の様相を呈しているのだ。

 この状況の背景には、アニメがより一般化し、若年層のみならず幅広い世代でアニメを観る層が増えたということがいえるだろう。その結果、コアなアニメファン以外にも知られているアニメ作品が増えているのだ。

 さらに、今年の『紅白歌合戦』で歌われるアニメ主題歌は、ヒット作や話題作のものであることに加え、アニメの内容を反映した歌詞が多い。こうしたアニメの世界観が反映された曲は、かつてであればアニソンを中心に歌うアーティストや声優などによって歌われてきた。それが、近年では人気J-POPアーティストが作る流れが顕著に見られるようになってきている。

 この流れが作品として結実したのは、『【推しの子】』主題歌のYOASOBI「アイドル」だろう。アニメと楽曲ともに世界的な大ヒットを記録し、アニメとJ-POPが極めて接近した状況にあることを象徴する楽曲と考えられる。

アニメ主題歌を新たなステージへ引き上げたYOASOBI「アイドル」

 YOASOBIの「アイドル」の歌詞は、正確に作品の世界を反映している。というよりも、最初から最後まで一貫して作品の世界について歌っており、まさしく正統な「アニソン」と呼ぶにふさわしい楽曲となっている。

〈誰もが目を奪われていく 君は完璧で究極のアイドル 金輪際現れない 一番星の生まれ変わり〉

 上述した1番のサビは、ステージやメディアで見せる星野アイの輝きを表している。ファンにとっての推しの輝きを表現する歌詞として最上級の表現だろう。

 続く2番の歌詞では、星野アイが作品中で同じグループのメンバーから嫉妬されつつも、完璧でいて欲しいと望まれていたことを歌う。

 そしてラスサビでは、星野アイが瀕死の状態で最後の力を振り絞り、ルビーとアクアに伝えた言葉がそのまま重なる。

 1曲を通して作品世界を歌ったYOASOBIの「アイドル」は、ビルボード・グローバル・チャートで1位を獲得するなど、アニメ『【推しの子】』とともに世界的に大ヒットを生んだことは記憶に新しい。紛れもなく、「アイドル」はアニメ主題歌を新たなステージへ引き上げた楽曲といえるだろう。

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