『アオのハコ』はアニメと相性抜群? ジャンプ史に残る恋愛漫画の映像化に期待すること
11月20日、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の漫画『アオのハコ』のアニメ化が発表された。本作のアニメ化に関しては12月16日開催の「ジャンプフェスタ2024」に『アオのハコ』のステージがあると発表された時から噂されていた。従来の「ジャンプフェスタ」のステージは、主にアニメ化されている/される作品のものが多く、登壇者のラインナップも声優を中心として原作者、編集者と続くからだ。
『アオのハコ』は『週刊少年ジャンプ』2021年19号から本誌での連載が開始。中高一貫のスポーツ強豪校を舞台に、主人公の猪股大喜が一つ年上の先輩・鹿野千夏に恋をする青春恋愛漫画だ。そこに大喜と中学1年生の頃から仲がいい蝶野雛や、親友の笠原匡が物語に絡んでくるわけだが、本作の大きな特徴はラブストーリーでありながら“ラブコメ”ではない空気感にある。どちらかというと、大喜のバトミントン、千夏のバスケ、雛の新体操などそれぞれが青春を打ち込む部活の様子や大会での試合の描写が緻密に描かれているため、コメディよりも“スポーツ漫画”としての魅力が恋愛要素に掛け合わされているのだ。
だからこそ、本作の映像化にあたってそれらのスポーツ描写にも期待したい。大喜が学校のスター的存在である千夏に触発されて頑張る姿、彼女への想いをかけて挑む試合。ただのイベントとして登場するのではなく、しっかり物語の一部として展開されるから試合の行方も気になるし、それを見守る登場人物の心情心理も際立つ。それがどのように映像で表現されるのか今から気になってしまう。
それ以上にやはり本作の魅力の大部分を占める、大喜と千夏の距離の詰まり方などの恋愛パートの描かれ方にも期待したい。『アオのハコ』は興味深いことに、第1話の時点で主人公がヒロインに恋をしていること、その理由やきっかけが提示されて始まる。だんだん一緒にいる過程で好きになるのではなく、すでに“好き”から始まる恋(しかもそれは1年半前からのもので、すでに長い片思いをしている)……にもかかわらず、千夏と実際に話し始めて関係が生まれるようになってから見える新たな一面、千夏からのリアクションで益々彼女の人となりを知り、好きが深くなっていく大喜の恋路は甘酸っぱくて仕方ない。作品の大部分を占める舞台となる体育館の空気、まだ朝の早い学校の中で自主練を通して火照る体、高まる気持ち。全てを爽やかに描きながらも、ヒロインを安易に性の対象として消費したり、自分勝手な都合で想いを伝えたりしない男性主人公の恋愛作品は、ここ数年の『週刊少年ジャンプ』のオアシス的な存在だった。