『ブギウギ』は心の声に聴き入る朝ドラ 自由でホットな登場人物の前に立ちはだかる戦時下

『ブギウギ』は心の声に聴き入る朝ドラ

 第7週は、まさにそんなヒロイン・スズ子の心情が、大人たちの思惑に巻き込まれたことも相まって「グッチャグチャになる」週だった。降って湧いた梅丸から日宝への移籍騒動の裏に、松永(新納慎也)への恋心、母ツヤ(水川あさみ)の治療費のこと、茨田りつ子(菊地凛子)の言う通り「浮かれていた」ことといった、スズ子のごちゃまぜの感情があったのも事実だったからだ。

 一方、それによって、「音楽のこと以外興味ない」草彅剛演じる羽鳥善一の純粋性が際立つ週でもあった。思わずスズ子を舞いあがらせてしまう松永の「I want you」と、善一の「福来君を離さないよ、絶対に僕は」は一見同等の情熱的な口説き文句にとれる言葉であるにも関わらず、善一の言葉に男女関係を髣髴とさせるものは微塵もなく、彼はどこまでも純粋に人間同士として、仲間として、あるいは一ファンとして、スズ子を必要としていることの心地よさと言ったらなかった。秋山と中山史郎(小栗基裕)を通して描かれた、師弟関係に「恋愛」が持ち込まれることの煩わしさが同時進行で描かれるからなおのこと。

 そして、何より「自分で自分のことを大切にすること」の重要性を説いていた、スズ子・秋山の尊敬する先輩・大和の言葉に帰結するように、それぞれに「自分が一番輝ける場所」に辿りついた2人のこれからが楽しみでならないというのに、時代がそれを許してくれそうにない。

 「人それぞれ、得手不得手はありますよ。人間はできることをすればいいんです」という第29話の善一の言葉こそ真実だ。でも、「甲種合格」に「初めて人に認められたと思っているのだろう」無邪気に喜んでいる六郎がこれから行かなければならないであろう場所は、その対極にあるような気がする。さらには、明らかに身体に異変が生じている母・ツヤ(水川あさみ)と、「映画とお芝居とお酒とお母ちゃんが大好き」な父・梅吉(柳葉敏郎)のことが今から心配でならない。「やりたいことをやらなくて何が人生だ」と思う人々の、自由でホットな心に否応なしに制限がかかるのが、戦時下という時代なら、彼ら彼女らは、これからどうやって歌い抜いていくのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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