『フェルマーの料理』母の悔しさを背負う蘭菜の挑戦 海によるレストランK買収の真相
「仔羊は私のスペシャリテなの」と語る母の料理を前に、蘭菜は涙を流しながらそれを口にする。一般的な“おふくろの味”とは少し異なるかもしれないが、その味には蘭菜にとって特別な意味があった。母親が作った料理を食べて育った郷愁を感じさせる、蘭菜の心に刻まれた特別な料理。それは、彼女にとって唯一無二の、温かな思い出の味だったのかもしれない。母の手がかけられた仔羊の料理は、蘭菜の心に深く根ざした家庭の味であり、きっと単なる食事以上の母からの愛情の証だったのだ。
「私が料理から離れたのは朝倉海のせいじゃないの」と、過去を懐かしむように桜は語る。彼女と蘭菜の人生を根底から揺さぶった無茶な立退きの背後には、西門の影があった。この男はどこまで巧妙で小狡い手を使うのだろうか。一方で、海の「たとえ憎まれても彼女を成長させる。だからその時まで、母親の店を奪って憎まれ役でいさせてください」という言葉には、胸を打つようなかっこよさがあった。蘭菜の成長を促すために自ら憎まれ役を買って出る決意の根底にある、“本心”がわからない点だけが不安だが……。
今回の岳のレシピは、フレンチトーストの起源を活かした究極の一品。海の提案により、西門に究極の料理を提供することになった岳と蘭菜。数学的帰納法から“ドミノ倒し”のように連鎖する美味しさを生み出す仔羊の肉料理は、毎回のことながら視聴者の食欲をそそる。
第5話では、“仲間”の存在が鮮やかに描かれる展開も。「女であることで料理人として認めてもらえない悔しさは、もう味わいたくない」と、厨房から出ようとしない蘭菜を、レストランKの皆が励ます。岳の「時代が変われば物の見方も変わる」という言葉は、母の悔しさを背負う蘭菜にとって、とても重い意味を持つ。今回の蘭菜の挑戦は、料理の枠を超えて、何か大きなものを変えようとしているようにも思えた。
一方で、蘭菜の問題が解決したかのように見えた矢先、海は岳に向かって「時間がないんだよ。もう二度と無駄なことに時間を使うな」と厳しく叱責する。今回、珍しく涙を流すシーンを見せたりと、彼が内に秘める深い闇を感じさせた海。その闇が、岳をも包み込んでしまう様子は見たくない。海が放つ強さと脆さの危うい輝きは、岳の瞳にどのように映っているのだろうか。
■放送情報
金曜ドラマ『フェルマーの料理』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
U-NEXTにて、各話の初回放送直後配信
Netflixにて配信中
出演:高橋文哉、志尊淳、小芝風花、板垣李光人、白石聖、細田善彦、久保田紗友、及川光博、宮澤エマ、細田佳央太、宇梶剛士、高橋光臣、仲村トオル
原作:小林有吾『フェルマーの料理』(講談社『月刊少年マガジン』連載)
脚本:渡辺雄介、三浦希紗
プロデューサー:中西真央
演出:石井康晴、平野俊一、大内舞子
©TBS
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