独自に捜査を始めた瞬間、誰1人、証拠や有力な情報を持っていないというお決まりの展開に、かき回し要員の中西（徳重聡）が入手した捜査用AI、その名も「Chat PIPO（チャットピーポー）」がいきなり犯人を特定する展開は、ご都合主義すぎて笑ってしまった。犯人は身近なところにいたわけで、ハッカーの塚原薫（詩羽）もカモフラージュにすぎなかった。決め手になったのが経費の領収書なのは、第1話から一貫した部分ではある。悪事がバレた日下部をギャフンと言わせるオチ付きだった。

　刑事ドラマを掲げつつ、多分にドタバタ劇の要素を含んだ『トクメイ！』はコント色が強く、どうせなら徹底して笑わせてほしいと思ってしまうが、そうなるとシリアスな要素とのバランスが難しくなってしまうので、ないものねだりかもしれない。両極端な要素が共存する振れ幅に本作の魅力はある。喜怒哀楽が移り変わる円の感情の変遷は、言葉を発しない無機質な数字や通貨と対照的で、経費という事象に込められたドラマの構造を示して余りあるものだった。

■放送情報
『トクメイ！警視庁特別会計係』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演：橋本環奈、沢村一樹、松本まりか、JP、前田拳太郎、徳重聡、佐藤二朗ほか
脚本：荒木哉仁、皐月彩
演出：城宝秀則、光野道夫、湯浅真
プロデューサー：近藤匡、小林宙
音楽：大友良英
主題歌：SEVENTEEN「今 -明日 世界が終わっても-」（HYBE JAPAN）
オープニングテーマ：LEEVELLES 「地獄の沙汰も愛次第」（ユニバーサルミュージック／Virgin Music）
制作著作：カンテレ、共同テレビジョン
©︎カンテレ
公式サイト：https://www.ktv.jp/tokumei/
公式X（旧Twitter）：@tokumei_ktv