『トクメイ!』橋本環奈の顔芸に頬がゆるみっぱなし 緊張と弛緩を行き来する作風に
「刑事ドラマは一度当たればシリーズを重ねますし、主演となればギャラも増えます。さらに一日署長を務めると、幅広い年代の方に名前が知られますので、コマーシャルも新たに決まる可能性があります」
警察には私たちが知らないことがたくさんある。『トクメイ!警視庁特別会計係』(カンテレ・フジテレビ系)第3話で、一円(橋本環奈)が斬り込んだのは一日警察署長。旬のタレントや女子アナが制服制帽でにっこり微笑み、芸能記者やカメラマンが取材に押しかけるあのイベントである。経費削減の余波で存続の危機に陥ったイベントを守るため、強行犯係の湯川(沢村一樹)が立ち上がった。
というのが、第3話のおおよそのあらすじである。行政機関が署内や組織を盛り上げようとして企画する催しは、たいていの場合、微温的で良いとこどりな、どっちつかずのものになりがちだ。遠回しに言えば、一日署長のようなイベントが毎年続いていることは日本が平和で治安が守られている証拠である。
だから、フィクションであることを強調した上で、仮に警察内に一日署長イベントを楽しみにして日々精勤している警官がいて、その人数が想定外に多くてもショックを受けはしないし、ドルオタの独身警官がここぞとばかりに地下アイドルを推しまくる一般的なイメージとのギャップも、警察の仕事に必要なことと考えれば受け入れられる。
何が言いたいかというと、一日署長のような微妙に現実と接点のある素材を取り上げる場合、往々にして観る側は距離感をつかみづらいということである。笑いかシリアスのどちらかに振り切らないと、リアリティを感じて引いてしまったり、中途半端で笑えないという事故が起きる。その点から言えば、思いきってネタに振り切った『トクメイ!』第3話はすがすがしかった。
誤解してほしくないのは、ドラマで誇張した表現があったとしても、現実に一日警察署長イベントは警察を身近に感じてもらうために不可欠で、陰で黙々と支える方々がいて催しが成り立っていることだ。決して茶化しているのではなく、劇中で白塗りの地下アイドルが乱暴な大人にすごむのも、フィクションであることを前提として「あり」なのである。