岡田将生には“情けない”役がよく似合う 『ゆとりですがなにか』で時代を象徴する俳優に
演じる岡田将生も実際に「ゆとり世代」にあたる人物だ。俳優としてのキャリアはすでに15年以上。絶えず若手世代の大人気俳優の一人として、そして時代を代表する若手俳優の一人として、最前線で活躍し続けてきた。けれども彼が時代や世代を“代表”するのではなく、“象徴”するようにもなったのは『ゆとりですがなにか』に出演して以降なのではないだろうか。
かつては正統派の青春ものやラブストーリー、ヒューマンドラマなどでも数多く好演していたが、ここ数年はもっぱら変わり者ばかり演じている印象が強くある。いや、“変わり者”というとやや語弊があるかもしれない。もう少しひらたくいうと、周囲の者たちと並んだときに、岡田の演じるキャラクターの個性ばかりが際立つ役どころを多く務めているのだ。近年の代表的な作品でいえば、やはり『ドライブ・マイ・カー』(2021年)の若手俳優役や、小説家志望の優雅な引きこもり青年を演じた『聖地X』(2021年)での姿が思い浮かぶ。いずれもタイプは違うが、「情けない……」と思わずにはいられないキャラクターである。
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「ゆとり世代」の最大の象徴である“協調性のなさ”を体現するのが岡田はバツグンにうまい。断言するが、周囲との不和を表現するのは誰にでもできる。飛び抜けて身勝手な振る舞いを取ればいいのだから。しかし一般社会における“協調性のなさ”というのは、周囲とのズレを指している。誰にだって自分のリズムがあるが、これを周囲と合わせていく能力が協調性というもの。岡田の演じるキャラクターの誰も彼もが自身の持つリズムを崩さないというのもあるが、それ以上に岡田の演技そのものがリズムを持っており、共演者たちと合奏をしていたかと思えば、いきなり独奏をはじめたりもする。
今作で妻との関係に不満を抱き、泣きべそをかいたりするシーンなどはまさに岡田のソロパート。坂間正和というキャラクターの「情けない」ところを、岡田将生という俳優のすべてをもって観客に提示してくる。発する声や表情はもちろんのこと、身振り手振りのいちいちが情けない。劇中では海外の人々から「負け犬」と呼ばれるほどのキャラクターだから、どれだけ大げさな演技をしても「負け犬」として様になるだろう。だが私たちが親近感を持って「情けない!」といえる坂間像を立ち上げるためには、“協調性のなさ=周囲との(リズムの)ズレ”程度にとどめなければならない。岡田の演技のリズムは、合奏にも独奏にも見事に適応しているのだ。
さんざん「情けない」とネガティブな言葉を記してきたが、冒頭で明記しているように、誰もがこれを持ち、どうにか隠しながら生きている。そして、社会生活において隠すべきこの部分が見えたとき、その人のことを「人間くさい」と私たちはポジティブな意味合いで称したりする。坂間とはつまり、とにかく人間くさいのだ。岡田のリアルなパフォーマンスを前にしたとき、同じ「ゆとり世代」の人間の一人として誇らしいとすら思えるほど。時代を象徴し続けてきた俳優・岡田将生は、現時点においてその道を極めたといえるのではないだろうか。
■公開情報
『ゆとりですがなにか インターナショナル』
全国公開中
出演:岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラ、仲野太賀、吉岡里帆、島崎遥香、手塚とおる、髙橋洋、青木さやか、佐津川愛美、矢本悠馬、加藤諒、少路勇介、長村航希、小松和重、加藤清史郎、新谷ゆづみ、林家たま平、厚切りジェイソン、徳井優、木南晴夏、上白石萌歌、吉原光夫、でんでん、中田喜子、吉田鋼太郎
脚本:宮藤官九郎
監督:水田伸生
プロデューサー:藤村直人、仲野尚之(日テレ アックスオン)
主題歌:「ノンフィクションの僕らよ」感覚ピエロ(JIJI.Inc)
製作:日テレ アックスオン
配給:東宝
©2023「ゆとりですがなにか」製作委員会
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