平手友梨奈が『うち弁』で表現する等身大の振る舞い パブリックイメージからの脱却へ

 スター女優を育てた芸能事務所の元敏腕マネージャー・蔵前(ムロツヨシ)が、ひょんなことからパラリーガルになり、超エリートの新人弁護士に振り回されながら奮闘するドラマ『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)。朝7時に鳴り響く目覚まし一発で起きあがる蔵前に対して、同じ時間に3個の目覚ましがけたたましく鳴っても二度寝をかましてしまうのが、蔵前を振り回しつつ、人間として教育されている途中の杏(平手友梨奈)である。蔵前に対して平然と「バカ」と言えてしまうクールな杏だが、なんだか目が離せない不思議な魅力がある。

 杏は高校2年生の時に予備試験に合格し、翌年には司法試験に最年少で合格した天才児。そんな彼女を演じる平手友梨奈は、これまでも天才役が多かった。欅坂46在籍時に映画初出演にして初主演を務めた『響 -HIBIKI-』(2018年)では、圧倒的な文才を持った現役女子高生・鮎喰響を演じ、『六本木クラス』(2022年/テレビ朝日系)ではIQ162の人気インフルエンサー・麻宮葵を演じた。これらのキャラクターはスマートに見えるのと同時に特定の人にしか心を開かず、近寄りがたい印象も与えていた。これは、欅坂46でセンターに立ち、一匹狼のような雰囲気を漂わせていた平手のパブリックイメージと合致していたとも言える。

 だが、そのイメージで本作を見ると平手の役柄に少し驚くかもしれない。杏は、蔵前や法律事務所の所長・香澄(戸田恵子)とテンポ良い掛け合いで利発さを見せているが、香澄からタクシーの使いすぎを指摘されると杏は「遅刻を回避しようとしてる」と主張するも「早く起きなさい!」と論破されていた。まるでああ言えばこう言う子どもと親のケンカのようだ。

 このように事務所の面々の前で話すことを嫌がってはおらず、むしろわがままを言えることを楽しく感じているのではないだろうか。また、第2話で杏は中学の同級会に参加したのだが、当時は仲良くなかったにもかかわらず、馴れ馴れしく話しかけてくる同級生たちに嫌気が差し、会場の出入口で、帰るのを阻止しようとする蔵前を前にイヤイヤ期の幼子さながらの抵抗をみせた。これまでにはなかった平手の等身大の振る舞いが、“ポンコツ”と表現されるかわいさに繋がっている。

 コミュニケーションに難ありだった杏は、蔵前のサポートによりそれをゆっくりと克服している。かつていじめられていた同級生が、杏に「ごめん」と「ありがとう」を同時に言うと、「どっち?」と聞いてしまう無粋さはあるが、互いに不器用ながらも心を通わせることができ、安心した様子だ。おもしろいのは、長年、人のサポートを仕事にしてきた蔵前も、その方法を少しずつアップデートさせていることだ。ふたりが相互作用しながら成長していく様子を今後も楽しく見守っていきたい。

■放送情報
『うちの弁護士は手がかかる』
フジテレビ系にて、毎週金曜21:00〜21:58放送
出演:ムロツヨシ、平手友梨奈、吉瀬美智子、菅野莉央、日向 亘、安達祐実、村川絵梨、松尾諭、大倉孝二、酒向 芳、戸田恵子、江口のりこほか
脚本:服部隆、おかざきさとこ、西垣匡基
演出:瑠東東一郎、相沢秀幸
プロデュース:金城綾香
主題歌:ザ・ローリング・ストーンズ「アングリー」(ユニバーサル ミュージック)
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/uchiben_kin9/
公式X(旧Twitter):@uchiben_kin9_cx
公式Instagram:@uchiben_kin9_cx

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