『下剋上球児』は最強布陣で挑む新しい日曜劇場に! “疼く”鈴木亮平がたまらなく愛しい

 いよいよ今夜スタートする日曜劇場『下剋上球児』(TBS系)。主演は、出演作ごとに新境地を切り開くモンスター俳優の鈴木亮平。そして、脇を固めるキャスト陣も黒木華、井川遥、小日向文世、生瀬勝久、松平健と「これぞ日曜劇場」と言いたくなる豪華な顔ぶれが揃った。

 そんな贅沢なキャスティングで描かれるのは、弱小高校野球部の下剋上。高校野球を通じて現代社会が抱える様々な問題、そして愛を問いかけていくという。待望の初回オンエアを前に、試写で第1話を鑑賞することができた筆者が本作の魅力を紹介したい。

平穏な日常と、呼び起こされる大人の「本気」

 「弱小高校野球部の下剋上」と聞けば、生徒たちの才能が次々に開眼していく夢の物語を想像するかもしれない。もちろん、その側面はあるのだが、本作はそれだけにとどまらない。その周囲の大人たちこそまずは目覚めていく必要があるのだと伝わってくるのだ。

 時は、遡って2016年3月。舞台は三重県立越山(えつざん)高校だ。この高校は「残念の“ざん”高」なんて言われてしまう学校。だが、そこに赴任して3年目の社会教師・南雲修司(鈴木亮平)は、仕事とプライベートのバランスを取りながら妻・美香(井川遥)とのステップファミリーを大切にしながら平穏な日々を過ごしていた。

 そんな南雲の日常に大きな変化が訪れる。突然「野球部の顧問をやってほしい」との打診が舞い込んできたのだ。しかし、越山高校の野球部は現在1名しか活動していない廃部寸前の部。にもかかわらず、地元の有力者・犬塚(小日向文世)が私財を投じて専用グラウンドを創り、強豪校から新任の家庭科教師・山住(黒木華)まで引っ張ってくる異例の事態。すべては強豪校に落ちた犬塚の孫・翔(中沢元紀)のためだった。

 野球部の顧問となれば、休日返上で今のような穏やかな生活は変わってしまう。頑なに断り続ける南雲だったが、1人黙々とバッティング練習をする部員の動きを見て、思わず手がモゾモゾと動き出す。そう、南雲には野球を封じた過去があったのだ。

 今の自分からはもはや眩しすぎる世界だからこそ、もう関わるまいとする自制心。それでも抑えられずに、前のめりになってしまう渇望感。かつて何かに没頭したことがある人ならば、きっと分かるのではないだろうか。そんな“疼く”鈴木亮平がたまらなく愛しい。

「観たいドラマを作る」最強布陣が、満を持して日曜劇場へ

 本作の大きな注目ポイントとして忘れてはならないのが、『アンナチュラル』『MIU404』など数々のTBSドラマのヒット作を生み出してきた新井順子プロデューサー×塚原あゆ子監督のタッグであること。さらに、脚本を手掛けるのは新井プロデューサー、塚原監督と共に『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』『最愛』を手掛けてきた奥寺佐渡子。彼女たちにとって初の日常劇場という大舞台であることも、ドラマファンとしては胸熱といったところ。

 新井プロデューサーのドラマが面白いのは、誰よりも自分自身が観たいと思っているドラマを作っていることだ。過去の作品を観ても美しいロケ地もまず「自分が行ってみたかった」と笑いながら話してくれたことがある。キャストについても、物語についてもそうだ。誰よりも視聴者視点に立つプロデューサーが、今見たいものを作る。それが今回はどこよりも熱い甲子園の夏だったのだろう。

 この数年、なにかに熱くなることそのものが縁遠くなってしまった気配がある。やっと取り戻した平穏。そのままでももちろん悪くない。でも、人はいつだって、どんなに回り道をしたって、心の底から熱くなれる。そんな「本気」のスイッチをONにしていくドラマが今こそ必要だったのかもしれない、と思った。

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