『時をかけるな、恋人たち』は期待値を超える快作に コメディ作品で本領発揮する吉岡里帆

 ヨーロッパ企画の上田誠の脚本に永山瑛太、それでいてタイムトラベルが題材になっていると聞けば、もう頭のなかに『サマータイムマシン・ブルース』が蘇らずにはいられない。しかも吉岡里帆が主演でSFラブコメディときた。ここ最近(と言っても、まもなく『ゆとりですがなにか』の劇場版が公開されるが)、コメディ作品であまり見る機会はなかったが、ブレイク直前の『明烏』といい三木聡作品といい、吉岡里帆の魅力はコメディ作品でこそ本領を発揮する。

 10月10日にスタートを迎えたカンテレ・フジテレビ系列「火ドラ★イレブン」枠の新ドラマ『時をかけるな、恋人たち』は、そんな事前の期待値を軽々と超えていく快作であり、プライムタイムとも深夜枠とも言い難い23時からの30分枠というのも非常にちょうどいい作品だ。このぐらいの時間帯に気楽に観られるテイストを維持し、無駄を排除しようという消極性ではなく積極的にテンポ良く見せようとする潔い演出の小気味良さたるや。

 広告代理店勤めの常盤廻(吉岡里帆)は、密かに想いを寄せていた後輩が他の同僚と婚約したことを知り、失意のどん底に。やけ酒をあおって泥酔状態で公園のベンチに座っていると、突然ベンチが地下に沈み「時空管理局パトロール部 令和5年世田谷基地」に連れて行かれる。そこにいたのは井浦翔(永山瑛太)をはじめとしたタイムパトロール隊員たち。彼らは違法にタイムトラベルをする“バッドトラベラー”たちを取り締まっているといい、廻に新たなメンバーとして協力してほしいと申し出るのである。

 公園のベンチの下に基地が隠れているというシチュエーションに、どことなく三木聡の『亀は意外と速く泳ぐ』のラストを想起させられたわけだが、あちらはスパイでこっちはタイムパトロール。基地のゲートが開くというゲートオープナー、バッドトラベラーによる歴史の改変を阻止するために関わった人の記憶を“剥がす”フォゲッターという装置に、基地の扉の奥に続いている時空境界線。物語に未来感とSF感をしっかりと与えるガジェットが機能する一方で、隊員たちの衣装や井浦のヒュンッと上に跳ねた髪で演出される古典的な“未来人らしさ”。この絶妙なバランスが、軽やかな笑いを助長させるのであろう。

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