『パリピ孔明』渋江修平の演出が実写化成功の要に “本気”の音楽シーンは必見

『パリピ孔明』“本気”の音楽シーンは必見

 水曜22時にフジテレビ系で放送中のドラマ『パリピ孔明』は、『三国志』で有名な軍師・諸葛亮孔明(向井理)が、ハロウィンで盛り上がる渋谷に転生したところから始まった。孔明はたまたま見かけたシンガーソングライターの月見英子(上白石萌歌)の歌声に魅せられ、彼女の夢をかなえるべく“軍師”になることを決意する。

 漫画原作で、アニメ化もされていた作品のドラマ化であるが、荒唐無稽な設定を、うまく実写化していると感じた。まず、孔明が降り立つ渋谷のハロウィンの街の光景にリアリティがある。もちろん、実際の渋谷を使ったり、スクランブル交差点のセットを使ったりはしていないが、人でごったがえす様子を孔明が地獄と勘違いするくらいには、まさに“渋谷”であった。

 特に、青みと赤みが効いた映像が印象に残る。演出しているのは、NHKで『シリーズ・横溝正史短編集』や『シリーズ・江戸川乱歩短編集』を手掛けた渋江修平。2022年は、コウメ太夫が素顔で出演したことで話題になったNHKドラマ『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』の「逃走の道」も手掛けている。

 数々のミュージックビデオも演出してきた渋江の映像には、独特の色合いとセンスが感じられる。普段はドラマを観ない層にも、この映像にひきつけられた人がいるのではないだろうか。

 脚本は、『サ道』(テレビ東京系)や、『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(日本テレビ系)、『正直不動産』(NHK総合)などの根本ノンジ。ここで挙げた3本は、すべて漫画原作だが、どこかすっとぼけた空気でくすっとさせてくれる作品であった。

 『パリピ孔明』もそんなすっとぼけた空気は健在で、そこに渋江のちょっとダークな色合いの掛け合わせもあって、独特の相乗効果が感じられる。

 また原作を忠実になぞりながらも、随所に工夫がある。特に、孔明に出会ったBBラウンジのオーナー小林(森山未來)のデスクの引き出しは、今まで開かれたことがなく、英子も小林が引き出しを開けたところを見たことがなかった。そこには土が敷かれ、箱庭のようになっている。

 小林が孔明に「石兵八陣」についての考えを求めるシーンが原作にもあるのだが、そのときに引き出しの箱庭に、石を配置して石兵八陣を表しているシーンはドラマのオリジナルだ。このシーンがあることで、オーナーがどれだけ『三国志』好きなのかがうかがえるし、「石兵八陣」を知らない人にも、それがどのような策であるのかをわからせ、後に効いてくるのである。

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