『きのう何食べた?』が描く“家族”のあり方 シロさんとケンジが新たな課題に直面する

 あの愛らしい2人が帰ってくる! 『きのう何食べた?』(テレビ東京系)のシロさんこと筧史朗(西島秀俊)と、ケンジこと矢吹賢二(内野聖陽)の何気ない日常を我々はまた覗かせてもらうことができるらしい。そんな待望の『きのう何食べた? season2』(テレビ東京系)放送開始を前に、劇場版『きのう何食べた?』が10月1日に地上波にて初放送される。

 ドラマ版では自身がゲイであることを隠し、恋人であるケンジと人前で連れ添って歩くことにさえ抵抗感を示していたシロさん。周囲の目から解き放たれ最終話では、ケンジを連れて実家に挨拶に行くまでの変化が描かれた。

 劇場版では、そんな2人が“家族になる”様子が描かれる。見どころは、まず冒頭に差し込まれるシロさんとケンジの京都旅行シーン。“彼氏と京都旅行なんて乙女の憧れ”だと舞い上がり、喜びを全身で表すケンジのピュアさが本当に愛らしいので、必見だ。しかし、シロさんの完璧なエスコートぶりに、何か良からぬことを告げられる前触れなのではないかと急に不安に陥る彼の姿もまた“恋する乙女”のようで微笑ましい。

 さらに、家族に自分たちの関係をオープンにしたことで新たに2人が遭遇する問題についてもリアルに描かれる。これまでは基本的に“2人だけ”で完結していた関係性から、否応なしにそれぞれの大切な人を巻き込んでしまう場面が出てくる。それを航(通称:ジルベール/磯村勇斗)のように「でも結局家に縛られてるってことでしょ?」「そんなに孫なんて必要?」と切り捨ててはしまえないのが、“歳を重ねる”ということの切実さなのかもしれない。

 誰も悪くはないし、本人としては善意からくる心配や配慮が時として相手を大きく失望させることもある。“誰も悪くない”からこそ、その解決の糸口が見出せず、途方もない気持ちになってしまう。「俺にとって一番大切な人と正月を過ごしたい」というシロさんのごくごく当たり前に思える望みさえ、誰かを我慢させたり、傷つけたり、何かを諦めなければ成立しないというのはあまりにやるせない。そして、そんなやるせなさが「誰かの嬉しいことってさ、やっぱ嬉しいじゃない」と、それが自分には無縁で手に入らないものだとしても心から喜べてしまえるケンジの身に降りかかることにまた胸が締め付けられた。

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