『シャイロックの子供たち』井ノ原快彦が“理想の上司”を体現 池井戸潤の“原点”がここに

 群像劇という性質上、やはり注目すべきはキャスト陣のアンサンブル。なかでも西木というキャラクターは、ドラマ全体に漂うミステリーを左右するキーマンとしても機能し、もはや一般的な主人公としての役目を超えて物語の大黒柱にもなっている。出世街道から外れ、部下を守るためなら上司にも立ち向かう。頼もしさと優しさを備えている一方で、その穏やかな表情の奥に時折見せる、信念なのか苦悩なのか判断し得ない複雑さ。気さくに部下と話す時ににじませる悲哀も含め、些細な表情の動きをも見逃したくないと思えてしまうほどだ。

 西木を演じる井ノ原といえば、言わずもがなV6時代から真面目さと人の良さそうな雰囲気がパブリックイメージとして根付いており、歳を重ねていくにつれてそれをさらに極めてきている印象だ。近年の代表作でもあるテレビ朝日系『特捜9』シリーズも、井ノ原のそのイメージからくる安心感があるからこそ長寿シリーズとして人気を博しているといっても過言ではなく、本作においても見事なまでに“理想の上司”としてありつづける。

 なかでも現金紛失事件で疑いをかけられた北川に一度は強い口調で詰めながらも、「やっていません」という彼女の言葉を信じて穏やかな表情に切り替わる一瞬。今の年齢の井ノ原だからこその説得力と、愛嬌を感じずにはいられない。もちろんその現金紛失事件をめぐって、自ら行員たちの指紋採取に明け暮れる姿もなかなかユーモラスであり、また支店のエース行員・滝野を演じるNEWSの加藤シゲアキとの共演シーンは、ドラマ的にも見逃せないポイントとなっている。

 今回リリースされるBlu-ray&DVDには、特典映像として井ノ原らメインキャスト陣のインタビュー映像が収録されている。それぞれのキャストがどのような心持ちで作品に臨んだのかを知ってからもう一度本編を観ると、また新たな見え方ができるかもしれない。さらに、製作陣とキャスト陣がWOWOWの「池井戸ドラマ」について語り合う『「連続ドラマW シャイロックの子供たち」から紐解くWOWOWドラマの魅力』(全5回)も収録されており、そこで語られるやりとりを観れば、この『シャイロックの子供たち』が「連続ドラマW」における池井戸作品の集大成、あるいは完成形なのだと実感できることだろう。

■リリース情報
『連続ドラマW シャイロックの子供たち』
9月29日(金)Blu-ray&DVD発売 ※レンタル同日リリース(全3巻)

Blu-ray:15,840円(税込)
DVD:12,870円(税込)

<映像特典>
・メインキャストSPインタビュー集(井ノ原快彦、西野七瀬、加藤シゲアキ、玉山鉄二)
・『連続ドラマW シャイロックの子供たち』から紐解くWOWOWドラマの魅力(全5回)
・完成披露試写会舞台挨拶
・特報
・TVスポット集

出演:井ノ原快彦、西野七瀬、加藤シゲアキ、三浦貴大、前川泰之、萩原聖人、玉山鉄二
原作:池井戸潤『シャイロックの子供たち』(文春文庫刊)
監督:鈴木浩介
脚本:前川洋一
音楽:木村秀彬
発売・販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2022 WOWOW/東阪企画

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