バカリズム×松田龍平による最高のコメディ 『ケンシロウによろしく』が“運命的に”面白い

 松田龍平も、体さえ鍛えれば、そのまま本当のケンシロウ役もいけそうなぐらいにカッコいい。だが彼の演じる沼倉孝一が、北斗神拳を(独学で)学んでやっていることは、風俗嬢・里香(西野七瀬)に“真のマッサージ”を教えて弟子にして月給100万円で雇ったり、妻とやりたくて仕方がない社長・野田(斉木しげる)のEDを秘孔で治したりといったことばかりだ。

 特にこのED治療のシーンは、おそらくバカリズムも全身全霊のバカを込めて書いたはずだ。そのバカリズムの魂を込めたバカに、松田龍平だけではなく、大ベテランの斉木しげるまでもが、バカにはバカをもって応えている。

「てめぇらに、今夜を楽しむ資格は、ある……!」

 副交感神経を刺激し、血流を良くする「八髎穴」というツボに百裂拳を叩き込む沼倉。徐々に膨らんでくる野田の股間。「勃ってる! 勃ってるよ!」喜ぶ野田……って、70歳過ぎた爺さんが西野七瀬に何を見せつけてるんだ。

 「お前はもう勃っている」ケンシロウそのままに決める沼倉……って、40歳過ぎたおっさんが元乃木坂のセンターの前で何をやってるんだ。

 筆者自身、「いったい何を見せられているんだ」と思うようなシーンだ。だが、このシーンを書いた張本人であるバカリズム自身、筆者とほぼ同年代である。「同年代の人間がこんなにもバカなシーンを誠意を込めて書き上げたというのに、俺はいったい何を日和っているんだ……」と、筆者は自らを恥じた。

 「もう年だから……」と日和ってしまうぐらいなら、人間はいくつになってもバカのままでいい。バカリズムに、そう教えられた気がした。

 ところで原作の沼倉孝一は、長年の鍛錬によりケンシロウと同等の肉体を作り上げた。これが鈴木亮平なら、あるいは“王騎将軍”の大沢たかおなら、きっちり体を作り込んでから撮影に臨むことだろう。

 だが松田龍平は、インタビューで「筋トレしたけど間に合いませんでした」と、悪びれもせずに答えている。この温度感、このテイストこそ、松田龍平が松田龍平たる所以である。「龍平は一生そのままの龍平でいてね」と、筆者は彼女気分で願っている。

『ケンシロウによろしく』主題歌予告 / 花冷え。-Believer 【DMM TV】

 『北斗の拳』作画担当・原哲夫によると、ケンシロウのモデルは「ブルース・リー+松田優作」である。

 松田優作にインスパイアされて生まれたキャラがケンシロウだ。そのケンシロウにインスパイアされて生まれたキャラが、沼倉孝一だ。そして沼倉孝一を演じるのが、松田優作の息子・松田龍平である。これは単なる偶然ではない。運命だ。

 原作において、筆者がいちばん好きなシーンがある。夢の中で沼倉とケンシロウが出逢うシーンだ。嬉しいことにバカリズムもこのシーンが好きで、「ドラマに入れさせてほしい」とお願いしたらしい。

 これはつまり、「ケンシロウが初めて実写映像化される」という、歴史的快挙でもある(1995年のハリウッド版については、忘れた方が賢明だ)。ケンシロウ役のキャスティングは、まだ発表されていない。それを観るまでは、死ねない。

 てめぇらに(そして筆者に)、このドラマを楽しむ資格は、ある。

参考

※ https://realsound.jp/movie/2023/08/post-1390361.html

■配信情報
『ケンシロウによろしく』
DMM TVにて、9月22日(金)より独占配信
出演:松田龍平、西野七瀬、倉科カナ、矢本悠馬、斉木しげる、勝村政信、野間口徹、松井愛莉、大鶴肥満(ママタルト)、義江和也、筒井真理子、中村獅童
原作:ジャスミン・ギュ『ケンシロウによろしく』(講談社『ヤングマガジン』連載)
脚本:バカリズム
監督:関和亮、スミス、中山佳香
©ジャスミン・ギュ/講談社 ©DMM TV
公式サイト:https://special.dmm.com/dmmtv/original/kenyoro/

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