『トリリオンゲーム』“手放さない男”ガクと真逆のハルの友情 大逆転を呼び込んだ信念

 『トリリオンゲーム』(TBS系)の第1話の始まりを覚えているだろうか。ハル(目黒蓮)はドラゴンバンク社の屋上に立って不敵な笑みを浮かべていた。「ドラゴンバンク社より上に立つ」。最終回が終わった今、改めて観ると初回から未来が予言されていたことに興奮すると同時に、トリリオンゲーム社の全てを蹴散らすような快進撃がもう毎週、見られないことに寂しくなってしまう。

 トリリオンゲーム社を大きくした立役者は、間違いなくハルだろう。彼のやることはいつもスマートかつ派手で目が奪われた。だが、ハル本人が、そのような行動ができるのはガク(佐野勇斗)のような人間がいるからだということを何度も口にしていた。私たちは「ハルならどんな苦難も乗り越えてくれる」と思っていたが、ハルは「ガクがいるから、このピンチも切り抜けられる」と思っていたのかもしれない。

 ガクはとにかく「手放さない男」である。第1話でトリリオンゲーム社の新社屋が完成し、想定外の大きな社長室に戸惑っていたガクは、秘書の水樹(あかせあかり)から席にあるイスについて「だいぶガタがきているので廃棄でいいですか」と問われた。だが、ガクはすぐに「これはこのままで!」と言っていた。このイスは、会社を設立した当初、ハルがガクに「最高のエンジニアには最高のイスが似合う」と言って用意したもの。ガクにとっては大きな思い入れがあるもので、ちょっとやそっとガタがきているからと言ってパッと手放せるものではなかったのだ。

 この「手放さない」精神はトリリオンゲーム社がゲーム事業に参入した時も発揮された。ハルはもともと、ゲーム事業に本腰を入れる気はなく、その真の目的は「メディア事業部を立ち上げること」であり、ゲーム事業はそのための資金集めに利用される予定だったのだ。だからハルの思惑通り、最初のゲーム開発費用として20億円が調達できた段階で、役目は終わり。ハルも「あとは適当なゲームを作らせる」というような発言をしている。しかし、桜(原嘉孝)たちのゲームへの情熱を目の当たりにしたガクは、なんとかゲーム事業も手放さず、成功させようと奔走する。ガクは基本的に気が弱く、自分から率先して強く動くことは少ない。でも、一度腹を決めると驚くほど大胆な行動をする。この時、どうしてもドラゴンバンク社の大人気ゲーム「ドラゴン娘」の開発者の情報が欲しかったガクは、ドラゴンバンク社のサーバーにハッキングするという、グレーゾーンに足を踏み入れている。そこまでする姿を見ていたハルはガクに協力し、「ドラゴン娘」を実際に開発したクリエーター・蛇島(鈴木浩介)をドラゴンバンク社から引き抜くことに成功。結果として、桜と蛇島たちが作り上げたゲーム「プチプチアイランド」は大ヒット。それだけではなく、同時期に立ち上がったメディア事業の主軸「トリリオンTV」を広告の面から支えることとなった。ガクの信念がビジネスにもプラスになったのである。

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