『呪術廻戦』で描かれる、日常の地続きにある呪いと恐れ 真人たちの強さを推し量る

 そういうことを考えると、やはり存在感が特別で突出しているのは真人だ。彼は人が人を憎しみ、恐れた腹から生まれた呪いである。真人が漏瑚たち“自然組”の特級呪霊のリーダー的立ち位置にいるのは、現代的な理由で理にかなっている。世界的に自然破壊が進んだ今、平気で海岸にプラスチックゴミを捨てたり汚染物質を垂れ流したり、富士山のゴミ問題が深刻化したり、森にも不法投棄をしていくような現代人にとって“自然”を崇める感覚は薄れている。異常気象やそれに伴う災害への恐れは依然として抱きつつも、それ以上に猟奇的な殺人事件や日常的なストーカー被害、あらゆる人と人の醜悪な事件の方に関心が寄せられているように感じるのだ。映画や漫画の分野でも“結局一番怖いのは、人だよね”というオチの作品も多い。そして自分と同種の人間に対してどれほど残酷になり得るか、モラルが罷り通らない動機の事件がメディアによって大々的に取り上げられることで、それに対する恐怖は一気に高まる。真人がはてしなく残虐でいる性格は、そういう部分からも由来しているのではないだろうか。

 だからこそ、来街者が平日で約5〜6万人、休日で7〜8万人という“人で溢れる”渋谷でのテロにおいて最も恐れるべき存在……そして凶悪な存在は真人なのだ。厄介なのは、彼がある意味で崇高な目標を掲げる漏瑚たちと少し違って、好奇心によるモチベーションも強い点である。その辺りにも自然に比べ、人間から生まれた呪いとしての下世話な感じがして面白い。すでに彼が駅構内の人々を改造人間にして歩き回っている情報が虎杖の耳にも届いている。吉野順平という彼のトラウマを刺激する真人は、虎杖に限らず、他の呪術師にとっても心して立ち向かわなければいけない相手だ。そしてそれ以上に未だに謎に包まれた、額に傷のある“夏油”の謎も、親友の五条悟との再会で明かされることになる。

■放送情報
『呪術廻戦』第2期
MBS/TBS系にて、毎週木曜23:56~放送
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、中村悠一、島﨑信長、櫻井孝宏、諏訪部順一原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史、小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
「渋谷事変」オープニングテーマ:King Gnu「SPECIALZ」(Sony Music Labels)
「渋谷事変」エンディングテーマ:羊文学「more than words」(F.C.L.S.)
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp

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