立川シネマシティ・遠山武志の“娯楽の設計”第47回
3時間超え/90分未満の映画は特別料金が必要? シネコンのタイムテーブルを作って検証
上から3つめのラインは3時間作品を3回上映したパターンで、そうすると日に4回上映にはなりますが、空白になってしまうはずの時間に上映回数を1回増やすことができています。
これが2時間になってしまうと、うまくいきません。それが下2つのパターンで、4回止まりになってしまいます。
3時間と組み合わせるには、やはり1時間程度の作品が最適なんですね。
このように見ていくと、多くの方が考えると思うのですが、1時間程度の映画と3時間程度の映画が同料金というのはどうなのだろうか、ということです。
2時間を基準として、それより長いこと、あるいは短いことで、1日の可売座席数は大きく変わります。
にもかかわらず、同料金であることは、施設ビジネスの観点からは非合理に思えます。多くの施設サービスにおいて、料金は時間で決まるはずです。カラオケ、ネットカフェ、レンタルスペースなどなど。
短い作品の場合は、やや料金を下げることは多く見られます。ですが長尺だから値上げした例は、ごく僅かしかありません。青山真治監督作『ユリイカ』は3時間37分ですが、当時2,500円均一の料金設定を行いました。3時間57分の『愛のむきだし』も同額の設定でした。
しかし、アカデミー賞作品賞にノミネートされたマーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』は3時間29分ですが、通常料金でした。
映画がデジタル化されて十数年、いわゆる映画ではない音楽LIVEやお芝居の録画などの上映や生中継(ライブビューイング)では料金設定はかなり自由になっており、6,000円を超えるような高額のものもありました。なぜかはよくわかりませんが、これらは受け入れられています。
先述のようにアニメの短尺のシリーズは安く設定することが多く、映画の料金は以前には考えられないほどに多様化しているので、一律で「通常料金」という括りを変えてもそれほど問題ないのではないでしょうか。
例えばこんな感じに。
ショート(89分以下)1,500円
ミドル(90分以上149分以下)2,000円
ロング(150分以上)3,000円
精細な検証は行っておりませんので、ざっくり感覚で適当な数字を並べただけです。あくまでもイメージ料金です。普通の感覚なら、90分の作品とその倍の180分の作品が同料金というほうがむしろ奇妙な感じがするので、反発は少ない気がします。
上のように上映分数をシステマティックに分類するかどうかはさておき「短編=ちょい安」はずっとあり続けているわけですから「大長編=ちょい高」の設定を増やしていけたらな、というのが映画館のホンネです。これからも長尺映画が増加していくならば。
しかしこれを言い始めたら制作費100億円以上映画と1億円以下映画で同額はどうなのか? なんて疑問も出てきそうではあります。本物のマグロの寿司と代替マグロの寿司が同じ値段で提供されるということはないわけですからね。なぜ映画だけはそうなっているのか?
ちょっと話が別方向に行ってしまいましたが、まだまだ映画の尺をめぐる視点はいくつもあります。しかし、ずいぶん長くなってしまいましたので、次回に譲ります。
特に長時間作品での尿意/肉体疲労/集中力散漫による鑑賞の質が低下すること(途中休憩要不要問題)、映画館鑑賞だけでなく、自宅鑑賞での日常生活への映画の組み込み方については書きたいことがあります。
仕事から帰って食事や風呂や家のことなんかを様々に行った上で、さらにそこに2時間という時間を確保できるか?
You ain't heard nothin' yet!(お楽しみはこれからだ)
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