『トリリオンゲーム』ハルとガクの見事な大逆転劇 俳優として新たな道を切り開いた目黒蓮

 そんなことをすれば一緒に刑務所行きだ。そう脅しをかける黒龍に「こっちはとっくに腹くくってんだよ」と、にじり寄るハル。その覚悟を決めた眼差しと、淡々とした口調に、ハルを通じて俳優・目黒蓮の底力を感じた。黒龍に食って掛かるハルの姿は、ベテランの國村隼に物怖じすることなく対峙する目黒そのものに見えたからだ。考えてみれば、ドラマ『トリリオンゲーム』が始まった当初、正直目黒とハルのキャラクターの相性はどうなのかと不安に思う部分もあった。これまで目黒といえばナイーブな青年の役が多く、その演技がむしろ好評だったこともあり、すっかりそうしたイメージが定着していたからだ。

 だが蓋を開けてみれば、もはやハルは目黒以外は考えられないほどの好演だった。トリリオンダラー(100兆円)を稼ぎ、この世のすべてを手に入れようと目論むハル。そしてアイドルとして、俳優として、芸能界のてっぺんを目指す目黒。もしかしたら、目的を達成するためにどんな努力を惜しまずに突き進む姿勢は、近いものがあるのではないか。そう思えるほど、最終回を経て、目黒のハル役は適任だった。この3カ月間、トリリオンゲーム社が急成長したのと同様に、目黒の俳優としての可能性も大きく広がったように感じる。そして「ハルは必ず戻ってくる」と桐姫(今田美桜)がニヤリと笑ったように、ハルも、そして目黒も、決して現状の成功だけでは満足しないだろう。いや、そうでないと困る。

 なぜならまだ、ハルとガクはトリリオンダラーを、この世のすべてを手にしていない。国内の大手企業になることなんて、まだロードマップの途中でしかないのだ。2人がこれから見据えるのは、海の先、つまり世界だ。ちょうど祁答院(吉川晃司)も海外で新たな投資をしている様子。まだまだ物語は続いていく予感しかしない。そして、目黒もこれからさらに多くの作品に出演していくことだろう。その中には、また新しい顔を見せて私たちを驚かせてくれるものもあるかもしれない。そうして吸収したものを武器に、いつか『トリリオンゲーム』の続編の制作決定が発表されないだろうか。

 「待たせたな!」と、ハルが、そして目黒が、再び私たち視聴者の前に戻ってきてくれる、そんな未来をつい思い描いてしまう。そして、これまでどんなに厳しい場面であっても期待に応えてくれたように、それが夢物語で終わらないことをどこか信じている。どうやら『トリリオンゲーム』を観ているうちに、私たちも世界一のワガママ視聴者になってしまったようだ。

■配信情報
金曜ドラマ『トリリオンゲーム』
TVer、U-NEXT、Netflixにて配信中
出演:目黒蓮(Snow Man)、佐野勇斗、今田美桜、福本莉子、竹財輝之助、あかせあかり、國村隼、吉川晃司
原作:稲垣理一郎/作画:池上遼一『トリリオンゲーム』(小学館『ビッグコミックスペリオール』連載)
脚本:羽原大介
演出:村尾嘉昭、竹村謙太郎、田中健太
プロデューサー:松本明子、松下ひろみ、加藤章一
主題歌:Snow Man「Dangerholic」(MENT RECORDING)
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS/撮影:高橋裕子
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/trilliongame_tbs/
公式X(旧Twitter):@trillion_tbs
公式Instagram:trillion_tbs
公式TikTok:@trillion_tbs

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