『最高の教師』涙を流しながら何度も謝る加藤清史郎 松岡茉優が与えた“最後のチャンス”

 鵜久森(芦田愛菜)の死に向き合うことを決めた3年D組の生徒たち。そんななか星崎(奥平大兼)は、事件の当日に浜岡修吾(青木柚)が生徒のふりをして学校に潜り込んでいた映像を見つけ、東風谷(當真あみ)に報告する。9月9日に放送された『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』第8話(日本テレビ系)は、とうとうクラスの本丸であり大将格に君臨してきた相楽(加藤清史郎)にフォーカスが当てられるエピソード。九条(松岡茉優)は彼に、“変わる”ための最後のチャンスを与えるのだ。

 教頭の会見を経て、他の教員たちもこぞって事件に向き合う覚悟を決める。その頃D組の教室では、浜岡と相楽が繋がっていたことが明らかになり険悪な空気が流れていた。「あいつは俺のせいで死んだ」という言葉の意味を東風谷に訊かれ、「説明できねえ」と教室を飛び出す相楽。追いかけた九条は、相楽の右腕である迫田(橘優輝)から、最近の相楽の笑い方が数年前に母親を亡くした時と同じ“壊れそうになっている”時の笑い方であり、なんとか相楽を救ってほしいと頼み込まれるのである。

 そんな迫田からの頼みを断りながらも、相楽の家を訪ねる九条。そこで九条は、「2023年4月21日」と、鵜久森が自ら立ち上がった日の日付を口にする。これまで生徒に向き合う時、九条はいつも“1周目”の時にその生徒に起きた出来事の記憶を頼りに、“未来”の日付を口にしてきた。自ら命を絶つ日、学校を辞める日、事件を起こす日。しかし今回、相楽に向けた日付は九条にとっては“2周目”のものであり、“過去”の日付である。相楽が彼自身の未来を変えるために必要なのは、未来に起こる単発的な出来事を防ぐことではなく、過去を省みること以外に選択肢はないということだ。

 あの時の鵜久森が、大勢のクラスメイトの前で“自分の弱さ”を口にしたことで見せつけた“強さ”。一見すると矛盾しているようにも見えるこの一文だが、自分の弱さを理解した上でそれを周りの人にさらけ出し、必要であれば助けを求めること。その難しさと覚悟を、このドラマはここまで幾度となく説いてきたのである。鵜久森が生きていた際に廊下に呼び出して謝ったものの、あえなく突き放されてしまった相楽に、九条が与える“最後のチャンス”。それは言わずもがな、クラスメイトたちに“本当”、すなわち彼自身の覚悟を曝け出すことである。

 そのシーンと直後に訪れる、鵜久森の家を訪ねて仏前の前で涙を流しながら何度も何度も謝るシーン。この一連から見えるのは、犯してしまった罪はたとえ加害側である自分自身が変わろうとも取り返しのつかないものであるという、至極当然で残酷な結果だ。それでもまた一方で、九条が迫田に言ったように、“憎むべきは人ではなく罪”。憶測や偏見といったある種の推定有罪で追い詰めるのではなく、己の罪と正面から向き合う機会を与え、それが永遠に許されるものではないのだと痛感させること。憶測で人を裁くことに慣れきった現代社会にこのドラマが提示した加害者の贖罪への道筋は、ひとつの考えるきっかけを与えてくれるのではないだろうか。

■放送情報
新土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:松岡茉優、芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅島みずき、山時聡真、本田仁美(AKB48)、窪塚愛流、福崎那由他、田牧そら、山下幸輝、寺本莉緒、萩原護、詩羽、田中美久(HKT48)、浅野竣哉、丈太郎、柿原りんか、橘優輝、莉子、田鍋梨々花、夏生大湖、藤嶋花音、岩瀬洋志、阪本颯希、岡井みおん、藤﨑ゆみあ、のせりん、川本光貴、白倉碧空、細田善彦、長井短、サーヤ(ラランド)、吉田羊、犬飼貴丈、荒川良々、松下洸平
演出:鈴木勇馬
プロデューサー:福井雄太、鈴木努、秋元孝之
チーフプロデューサー:田中宏史
主題歌:菅田将暉「ユアーズ」
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
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