『らんまん』“競い合う”意義と最終回への大きな動き 長屋の住人全員の成長物語に

『らんまん』競い合う大切さと最終回への動き

 万太郎(神木隆之介)が学術調査で日清戦争で日本の領地となった台湾へ渡った先週の『らんまん』(NHK総合)。植物を“知りたい”という万太郎の純粋な気持ちは、いわば国力増強のために利用されることとなった。その恐ろしさと同時に、“知りたい”という気持ちで敬意を持って向き合えば、言葉や文化が異なる人たちとも繋がれることを実感した万太郎。

 欲望に左右されることなく、その植物がどんな土地で育まれ、その土地の人々にどのような名で親しまれてきたのか。嘘偽りない事実を明らかにし、永久のものとして図鑑に刻む。それは、万太郎が植物学者として示した争いへの最大の抵抗といえるだろう。

槙野万太郎役・神木隆之介

 本作も残すところあと4週。物語がラストスパートに差し掛かる中、第111話では決意を新たにした万太郎のもとに竹雄(志尊淳)と綾(佐久間由衣)が訪ねてくる。東京へやってきた彼らも、ここで最終回に向けた大きな動きを見せるのだった。

 私たち視聴者にはつい先日の出来事に感じられてしまうが、作中では峰屋の廃業から実に10年という月日が流れている。この間、竹雄と綾は2人の子宝に恵まれており、寿恵子(浜辺美波)も5人目を妊娠中。万太郎は波乱に満ちた日々を送りながらも、虎鉄(濱田龍臣)との出会いをきっかけに始まった全国の植物愛好家たちと手紙のやりとりは変わらず続けてきた。

(左から)槙野万太郎役・神木隆之介、槙野竹雄役・志尊淳

 標本を送ってもらう代わりに、その植物の説明を手紙にしたため、植物図を添えて丁寧に送り返している万太郎。さらに、彼はこれまでに刊行してきた図譜を説明する本文の原稿も書きためていた。本文は活版印刷だが、図譜は石版印刷。すぐに売り切れてしまうため、毎回300冊もの図譜を刷っているが、全てを刷り終える前に細かい線が潰れてその度に万太郎は同じ図版を描き直しているという。それでもなお、版元は見つからず、未だに自費出版。これでは体力もお金も消費されていく一方だ。

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