『初恋、ざらり』キャラクターの心情に共感の声が続々 現代人との“ざらり”とした共通点
有紗の恋人である岡村は、自由奔放な兄がいるために、両親に“普通”であることを求められて生きてきた。年齢の関係もあって、自分勝手な振る舞いに抵抗がある。また、前述の理由から大抵諦めることを選択してきたため、行動するより先に諦めてしまう様子も作中で描かれている。母親の交際相手に襲われかけた有紗を匿ったり、パートの同僚に責められている有紗を庇ったりと正義感はあるのだが、きっぱりと決断できず、悩んでいるシーンも多い岡村。ここには、現代人の優柔不断な側面が反映されている。
行動心理学によると、高度情報化社会に生まれた世代は初めから選択肢がたくさん用意されているうえに、IT・テクノロジーを使えばさらに選択肢を増やすことができるため、見切りをつけるのが苦手で優柔不断な人が多いとされている。さらに、コロナ禍で長期にわたって行動を制限されていたこともあり、物事に対して慎重になっている節がある。ここに岡村の性格を当てはめてみると、諦めの姿勢が身に染みついてしまっている、とも言い換えられるだろう。高度情報化社会であり、アフターコロナの今だからこそ、岡村の戸惑いが現実感を帯びて伝わってくる。
このように、『初恋、ざらり』の有紗と岡村は、それぞれ視聴者が共感しやすい性質をもっている。第7話では、同じく知的障がいをもっている有紗の友人で、有紗よりも感情の制御が苦手な友子(高山璃子)の発作を目の当たりにした2人。動揺を隠せない岡村に、募った不安が爆発し、友子と同様に発作という形で発現してしまった有紗。放送を重ねるごとにすれ違いが明確になっていく2人の様子から、さらに「障がいと向き合っていく」ことの意味を考えさせられる展開となった。普段は意識の外にあるテーマだが、キャラクターの性質に共感しているからこそ、身のまわりに障がいをもつ人がいなくても、自然に向き合えているような感覚が生まれるのではないだろうか。目の前の相手の先にあるお互いの家族、そして将来にも、より深く向き合っていかなければならない有紗と岡村の関係の変化に、次回以降も注視していきたい。
■放送情報
ドラマ24『初恋、ざらり』
テレビ東京ほかにて、毎週金曜24:16~放送
出演:小野花梨、風間俊介、尾美としのり、熊谷真実、西山繭子、浜中文一、若村麻由美
原作:ざくざくろ『初恋、ざらり』(CORK/KADOKAWA)
脚本:坪田文、矢島弘一、池田千尋、紡麦しゃち、藤沢桜、上野詩織
監督:池田千尋、七字幸久、倉橋龍介
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:北川俊樹(テレビ東京)、廣瀬雄(東北新社)
OPテーマ:a子「あたしの全部を愛せない」(londog)
EDテーマ:ヒグチアイ「恋の色」(ポニーキャニオン)
音楽:元倉宏、小山絵里奈
制作:テレビ東京/東北新社
制作協力:楽映舎
製作著作:「初恋、ざらり」製作委員会
©「初恋、ざらり」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/hatsukoizarari/
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