『ハート・オブ・ストーン』は『M:I』シリーズと似て非なる? ガル・ガドットの勇姿を堪能
『タイラー・レイク』シリーズや『グレイマン』(2022年)など、次々に大作が送り出されているNetflixのアクション映画。このほど配信が開始された『ハート・オブ・ストーン』は、そのなかで『ワンダーウーマン』シリーズで知られるガル・ガドットが主演するスパイアクションだ。
スカーレット・ヨハンソン、シャーリーズ・セロン、レベッカ・ファーガソン、ジェニファー・ローレンス、エミリー・ブラント、アナ・デ・アルマス、ルピタ・ニョンゴ、フローレンス・ピューなどなど、近年アクション映画における女性の活躍の場がより広くなってきたことにより、スター俳優たちの戦う姿を目にすることが多くなってきた。
なかでもガル・ガドットは、世界で初めての女性のスーパーヒーローと言われるワンダーウーマンを演じていることもあり、一種の象徴的な存在にまでなっていると感じられる。最近では、脇役としての出演だとしても、彼女が出演しただけで異様なオーラを放っているように感じられるのである。この雰囲気は、男性のロマンが投影された象徴であるジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグの位置に近いところがあるのではないか。
さて、Netflix配給のアクション作品では『レッド・ノーティス』(2021年)で、ドウェイン・ジョンソン、ライアン・レイノルズとともに圧倒的な視聴数を稼ぎ出したガドットが、今回『ハート・オブ・ストーン』で単独の主演として演じるのは、イギリスの情報機関「MI6」のエージェント、レイチェル・ストーンだ。といっても彼女は、花形のスパイを裏で支える裏方の、しかも新人という、派手な活躍をしそうにはない立場だ。冒頭で映し出される、イタリアの山岳地帯でのミッションではチームで動き、同僚のヤン(ジン・ルージ)らをサポートする役割を担う。
と思いきや、本作はこの冒頭部分で、すぐにそんな設定をひっくり返してしまう。じつはレイチェルは、影の多国籍スパイ組織「チャーター」にも所属する凄腕のエージェントだったのだ。といっても、レイチェルはMI6と敵対するために潜入しているわけではない。チャーターという組織は、あくまで世界の秩序を守るため、政府組織のミスを補う役割を果たそうとするのである。
それだけに、チャーターのバックアップはMI6と比べても桁違いに豪華。組織を構成するスパイたちの能力も非常に高く、それぞれにトランプのカードにちなんだコードネームが与えられている。そのなかで「ハートの9」と呼ばれているレイチェルは、MI6のチームとは別行動をとって、アルプス山脈のスキー場から武器商人を追い、最新テクノロジーによるナビにも助けられながら、斜面を滑走し、崖を飛び越えていく。これらの設定や展開は、いささか荒唐無稽に過ぎるようにも感じられるが、この辺りはどちらかというとアメコミの世界観の方に近いかもしれない。また、チームやレイチェルに立ち塞がる謎の女性を、『RRR』(2022年)にも出演した、インドのスター俳優アーリヤー・バットが演じているところはチェックしておきたいところだ。
その後も、スカイダイブやバイクアクションなど、手を替え品を替え、そして場所を変えながら、レイチェルのアクションが映し出されていく。その意味では、彼女を演じるガル・ガドットの勇姿を堪能するのに、本作はうってつけだといえる。ここに至って理解できるのは、おそらく本作は『ミッション:インポッシブル』シリーズを原型にしているのだろうということだ。Netflix配信のアクション大作の多くを手がけながら、同時に現在『ミッション:インポッシブル』シリーズの製作も請け負っているスカイダンス・メディアが、本作の製作をしていることを考えると、今回のような企画が出てくるというのは、むしろ当然だといえるだろう。