『トリリオンゲーム』目黒蓮と佐野勇斗の正と悪の見事な対比 2人の運命を変える分岐点

 ハッタリをかますハル(目黒蓮)と、技術で現実化してきたガク(佐野勇斗)。このコンビなら、どんな夢でも叶えられる。そう思っていた。だが、近い将来2人はバラバラになることを私たちは知っている。そして、ついにその分岐点がやってきたようだ。

 金曜ドラマ『トリリオンゲーム』(TBS系)第5話。これまで一緒にひとつずつ壁を乗り越えてきたハルとガクだったが、初めて行動を別にすることに。ハルはメディアの力を手に入れようと、投資家の祁答院(吉川晃司)とタッグを組み、大手芸能事務所のゴッド・プロモーション(通称:ゴップロ)を買収しようと目論む。これまで謎の男とされてきた祁答院だったが、前職はゴップロのマネージャーだということがわかる。そして、看板役者のヒムロ(曽田陵介)が起こしたひき逃げ事故の罪をかぶって事務所を去っていた。それを知ったハルは、そのネタをもとにゴップロの社長である神(塚本高史)に半ばゆすりのような形で交渉を開始するのだった。

 事務所側に弱味があるとはいえ、脅迫罪が成立すれば逮捕されてもおかしくない状況。その覚悟はあるのかと問う祁答院に、ハルは「とっくに前科トリリオン犯ほどやらかしてるんで。いまさら一犯やそこら増えたところで、誤差だろ」と言ってのける。その不敵な笑みに、またもやゾワッとさせられた。その言葉がどこまで本当なのか、私たちには判断する術がない。ハルの過去で明かされたことは、学生時代にガクを助けた場面くらいである。ドラゴンバンク面接で話していた学生時代の思い出なんかも、きっとみんな嘘だ。

 果たしてハルはこれまでどんな日々を過ごしてきたのか。一般的な感覚で過ごしてきた若者なら、投資家から集めた20億もの大金をいとも簡単に口座から移動させてしまう度胸なんて持ち合わせていないはず。ましてや、大株主をも脅して大手芸能事務所を乗っ取ろうなどと考えもつかないことだ。ハルのことを全く知らないという事実を突きつけられたような気分だった。一方、ガクはといえば、ハルがハッタリのために用意したダミーだと言い放ったゲーム開発事業をどうにかしようと考えていた。ハルの勢いによって人生が大きく変わったガク。その成功体験があるからこそ、「ハルくんだったら……」とハルの勝負の仕方を追いかけようとする。だが、やはりガクはガクなのだ。

 ドラゴンバンクのシステムをハッキングに成功したガク。機密データをすべて盗み出すことができる状態だったにもかかわらず、何も持ち出さない。それどころか、ご丁寧に脆弱性のあるシステムを修正した上に、アップデートの指示書まで残していくのだった。それだけの技術があればズルい手をいくらでも打つことができそうなのに、ワルになりきれない。でも、それがガクのいいところ。ガクがワルになることができなかったのは、桜たちのようなクリエイターの姿を想像したから。

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