『ファインディング・ニモ』に眠る監督の創作論 魅力的なキャラクターに共通する“背骨”
『ファインディング・ニモ』の面白さとして、ニモの冒険に引けを取らず、父であるマーリンの活躍に焦点が当てられている点が挙げられる。だからこそ、本作は親子で鑑賞しても大人も十分に楽しめる作品として高い評価を得ている一方で、ニモを愛するがゆえのマーリンの心配性で過保護な一面は皮肉っぽく描かれているようにも感じられた。
しかしこの「誰にも変えられない生まれ持った才能や気質のようなものとどう向き合うか」こそが、我々が『ファインディング・ニモ』を通して監督に問われている大きなテーマでもある。ニモを愛し守り抜く強い想いを背骨とするマーリンにとって、冒険の中での自身の変化は子どもを見つめる眼差しそのものの変化でもあった。作中ではニモの本当の気持ちや日々の成長に寄り添うことで、マーリンは無事にハッピーエンドを手にする。
当初、珊瑚礁の外に出て広い世界を旅することは、マーリンにとってはあり得ないことだったはずだ。ニモへの大きな愛こそが、マーリンを突き動かし、彼自身をすっかり変えてしまった。人間でいうところの信念とも呼べる“背骨”がどのように他のキャラクターに通っているのかを、改めて今回の放送から考えてみるのも面白いだろう。
絶大な人気から、過去に複数回にわたって視聴した経験のあるファンも多いであろう本作。ニモを探すというストーリーを追うだけでも十分に面白い作品ではあるが、それだけではもったいない。隠されたストーリーテリングの掟を知った上で、もう一度観てみると、作品に眠る監督の創作論に触れることができるのではないか。
参照
※ https://www.ted.com/talks/andrew_stanton_the_clues_to_a_great_story
■公開情報
『ファインディング・ニモ』
フジテレビ系にて、8月5日(土)21:00~23:10放送
製作総指揮:ジョン・ラセター
監督・原案・脚本:アンドリュー・スタントン
共同監督:リー・アンクリッチ
製作:グラハム・ウォルターズ
脚本:ボブ・ピーターソン、デイヴィッド・レイノルズ
音楽:トーマス・ニューマン
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