浜辺美波、『らんまん』で“少女性”から“母性”の領域へ 理想的な母を演じた22歳の新境地

 NHK連続テレビ小説『らんまん』で、主人公・槙野万太郎(神木隆之介)の夢に向かって共に歩んでいく妻・寿恵子を演じている浜辺美波。母親役を本格的に演じるのは今作が初めてといえる浜辺だが、まさに花のように美しく明るい妻であり、かつ大地に根をはった大樹のように家族をしっかりと支えている。これまでの“少女性”を感じさせる演技から変化を感じる今作における浜辺の魅力に注目する。

『らんまん』浜辺美波は朝ドラ屈指の画期的な妻に 万太郎と“対等”な寿恵子の冒険心

『らんまん』(NHK総合)の後半戦のポスタービジュアルは、ピンク色をバックに、万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)の2ショッ…

 浜辺はこれまで、見た目に感じる“少女性”とは裏腹に、芯の強さを持った女性を数多く演じてきた印象がある。ブレイクのきっかけとなった映画『君の膵臓をたべたい』では、余命1年にもかかわらず、運命を恨まず、明るく前向きな少女・桜良を演じた。シチュエーションに合わせて表情が様々に変化し、主人公の僕(北村匠海)に対しても相手に媚びない距離感が自然だった。「病気である」ということがベースにあるからこそ、その明るく媚びない姿勢が強さを感じさせ、逆に儚さを募らせていた。

 一方、2020年に放送された『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)で姑のいびりに翻弄されつつも、怯むことのない強さをわずか20歳で見せるなど、絶対的な安心感と強さを感じさせる演技も得意としている。最近ではドラマ『ドクターホワイト』(カンテレ・フジテレビ系)や、映画『シン・仮面ライダー』など“人間らしくない役”で人間味を滲ませる役が続き、元ショッカーの構成員・緑川ルリ子役では、感情を見せず任務を遂行していく、肝が据わったクールな演技を見せた。そうした中でちょっとした隙を見せた時のかわいらしさが、実年齢の少女らしさを感じさせるところも浜辺の魅力だろう。『らんまん』では、夫の成功が私の生きがいと、あくまでも夫と夢に向かって並走しているという考えは、明治時代が舞台だと考えると実に強い信念を持った女性だ。

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 寿恵子の魅力は、万太郎の植物への思いが無邪気で一途なように、万太郎への思いが一途なところ。万太郎が植物を目の前にすると目をキラキラとさせ嬉しそうに語るように、結婚前は、万太郎が寿恵子の店に来て会話をしている時、本当に目がキラキラしていて、好奇心溢れる表情を見せていた。看板娘として狭い店の中の世界だけで生きてきたからこそ、冒険心あふれる万太郎の夢に惹かれた理由なのかもしれない。

 プロポーズのシーンは、純粋さと万太郎以上の猪突猛進さで“初々しさ”を表現していた。万太郎は「わしは寿恵子さんを好きながです! どうしようもなく。理屈じゃないき」と告白し、その返答が「私、冒険に出たかったんです。自分の力を思いっきり試せたらすごく楽しいだろうなと思っていました。あなたは草花の道をひたすら突き進んで、全速力で。そんなあなたと並んで走るなんて、性根を据えなきゃ。あなたと一緒に大冒険を始めるんだから」と返答。一緒に歩んでいくという覚悟を決めた言葉は、単に好きというのではなく、これから新しい冒険が始まるワクワク感が伝わった。

 結婚してからは、研究室を出禁にされた万太郎が、「岩に穴を開けながら進むしかないがじゃと」と嘆くと、寿恵子は「ツルハシがいりますね」「やれるだけやってみましょうよ」と前向きに持っていく姿勢。「がんばれ」という演技ではなく、ケセラセラな感じに勇気づけられるのだが、浜辺はこの嫌味のない距離感の演技が相変わらず上手い。気がつけば、万太郎の笑顔を絶やさぬよう、全てポジティブにふるまい、“支える演技”に変化している。それだけではなく、万太郎が徹夜で体を壊さぬよう石板印刷機を購入しようと自ら動き、夫の成功のために何とかしたいという度胸や必死さが、ただの脇役にならず一緒に冒険している感を出している。もともと“熱い”演技を得意としている浜辺なだけに、ここぞとばかりに見せてくる熱量が献身的でありつつどこかコミカルだ。そこに人間味が感じられ、寿恵子が魅力的に見えてくる。

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