『最高の教師』は綺麗事を許さない? 『3年A組』『最高の生徒』を踏まえて展開を予想

 今シーズンのドラマで1番の“問題作”になるだろうと放送前から話題となっていた、松岡茉優主演の日本テレビ系土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』。

 今作は2019年1月期に日本テレビ系で放送された菅田将暉主演のドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』を手掛けたプロデューサーと監督による完全オリジナル脚本作品で、同じ世界線を感じさせる。また、『最高の教師』と同じ土曜日に「Zドラマ」枠で放送中の『最高の生徒~余命1年のラストダンス~』で、『最高の教師』の舞台である「3年D組」の隣のクラス「3年C組」の生徒側の世界が描かれるなど、『最高の教師』は多角的な視点で楽しめるドラマとなっている。そこで、『3年A組』との比較や『最高の生徒』との関連から展開を考察してみたい。

 今作は、鳳来高校3年D組の担任教師である九条里奈(松岡茉優)が、卒業式の日、学校の吹き抜け廊下の上階から何者かに突き落とされる。その時に視界に入った犯人の手元には「D組 卒業おめでとう」と記された深紅のコサージュが。「私は生徒に殺された」と理解し、地面に着きそうになった瞬間、「ハッ!」と目を開けると、九条は3年D組の教壇の前にいた。黒板の日付から1年前の始業式の日にタイムリープした九条。目の前の30人の生徒は、1年後、自分を殺す30人の容疑者。殺されたときの世界線では、面倒を起こさぬよう生徒たちと一定の距離を置いていた九条が、未来を変えるべく自分も変わる覚悟を決め、「私は担任として皆さんに寄り添い、あなたたちの為に何でもします」と生徒たちに宣言し、生徒のために全てをかけて向き合っていく。

 今作の見どころは単純に犯人探しではなく、教師として犯人となる生徒を生み出さないように未来を変える物語だということ。初回では、3年D組の真面目な優等生・鵜久森叶(芦田愛菜)が、1度目の人生ではクラスのいじめにより1学期の5月に不登校となり、その後死ぬ(自殺なのか?)ことを知っている九条は、拒否されても鵜久森に寄り添い、盗聴や盗撮など手段を選ばずにイジメの証拠を掴み、鵜久森を救った。

『3年A組』と『最高の生徒』とどういった関わりが生じる?

 今作は、『3年A組』と同じスタッフが手掛けた作品であり、その内容からも、放送前は「『3年A組』の続編か?」という声も多く囁かれた。画面に漂う冷たい空気や、主人公教師のクールさと鬼気迫る覚悟、そして限られた時間の中で生徒たちと真っ向勝負していく姿など世界観は近い。ただ、同じ犯人探しでも、自殺した生徒と自身が殺されるという違いがあるし、『3年A組』は変えらえれない真実に向き合う物語なのに対し、『最高の教師』は未来を変えるために行動するという決定的な違いがあり、イデオロギーは一緒でも構造としては正反対。とはいえ、生徒たちにとっては教師の行動により自分の生き方を見つめ直し、未来が変わることには変わりない。

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 そして物語をより面白くしてくれるのが、3年C組が舞台の『最高の生徒』の存在。主人公の伴ひかり(畑芽育)は、遺伝性の病気で余命1年を宣告されたことで、残りの人生を楽しく生きようとクラスメイトたちもポジティブに変えていく、女子高校生の青春ストーリーとなっている。第1話では、九条が「生徒に寄り添う」と宣言した時にひかりが覗き見をしていて、その言葉に感銘を受けていたり、3年C組の鍋島聖衣良(みとゆな)とカップル系動画を配信しているのが3年D組の栖原竜太郎(窪塚愛流)だったりとリンクしている。同じ余命1年でも学園ミステリーと青春ストーリーという対比であったり、聖衣良を動画で晒し者にするD組の生徒が本当に嫌な奴として描かれているところが面白い。

 ひかりがここまで前向きなのはなぜか。最初の人生で思い出に残るようなことが何もできず悔いが残り、彼女も死の直前でタイムリープしてるのかも知れない。そうなると、お互いの死を知っていて何か救いの手があってもおかしくない。『3年A組』や『最高の教師』は、どちらかと言えば大人が手を差し伸べるドラマだが、『最高の生徒』は生徒たち自身で解決する世界を描いているので、対で観るとバランスが良い。生徒側の視点というのが『最高の教師』の一つの鍵となってくるはずだ。

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