『東京リベンジャーズ2』は儚くも美しい闘争記 後編の感涙必至な“蹴り”を武道家が解説
そして当然、この『決戦』が儚いだけで終わるわけがない。
このシリーズにおける格闘シーンが素晴らしいのは、各キャラクターの戦い方に、しっかりとした個性があるところだ。マイキーの多彩な蹴り、ドラケン(山田裕貴)の魂を込めた鉄拳、一虎の骨折り、場地(永山絢斗)の組んでのヒジ・ヒザ・頭突きなど、各人の性格まで反映されている。
今作の格闘シーンにおいて、筆者の涙腺を緩ませてしまった人物がいる。三ツ谷隆(眞栄田郷敦)だ。芭流覇羅との決戦において、三ツ谷が繰り出した腹部への回し蹴り。その蹴りのフォームを見た時、筆者は劇場で声を上げそうになり、ついで涙が出そうになった。その蹴りはアクションとしての魅せる蹴りではなく、「空手家の蹴り」だったからだ。それも、空手家の蹴りがムエタイっぽい蹴り方になる前の、「昭和の空手家」の蹴りだったからだ。きっちり膝を畳んでから、コンパクトに開放して蹴っている。角度的に見えないが、恐らくスネや足の甲ではなく、中足(足指を反らせて盛り上がった付け根部分)で蹴っている。この箇所での回し蹴りは、突き刺さるように当たるため威力は大きいが、足指をケガしやすいというリスクがある。だから次第にスネや足の甲での蹴りが一般的になっていったのだが、少なくとも昭和40年代ぐらいまでは、この中足での回し蹴りの方が主流だったらしい。その証拠に、原作漫画におけるマイキーの回し蹴りは、ほとんどが中足によるものである(靴を履いているから爪先での蹴りになるが)。それは、マイキーの空手の師匠がマイキー自身の祖父(昭和の空手家)だからだ。
三ツ谷を演じているのは、眞栄田郷敦だ。彼の父親は、伝説のアクション俳優・千葉真一である。千葉真一は、極真会館黒帯のゴリゴリの昭和の空手家だ。恐らく、千葉真一自身が幼き日の郷敦に「昭和の空手家」の蹴りを教えていたのだろう。そんな光景を一瞬で想像してしまい、筆者は涙が出そうになったのだ。
千葉真一の魂は、息子・眞栄田郷敦の中に生きている。
映画版『東京リベンジャーズ』は、今作で“一応の”終わりを見た。パンフレットを見ても、監督、主要キャスト、みんな揃って「これで終わり」という趣旨の発言をしている。
筆者は認めたくない。今作で片鱗を見せた、マイキーの“黒い衝動”の行方。キサキ(間宮祥太朗)の本当の目的と正体。チラッとだけの出演の割には、再現度が高過ぎる灰谷兄(栗原類!)の今後の活躍。タケミッチとヒナタ(今田美桜)の恋の行方……。映画で描くべきポイントは、まだまだ無限に残っている。
そしてなにより、眞栄田郷敦演じる三ツ谷が本当に活躍するのは、これからなのである。パンフレットで「有終の美を飾った」かのように語っている監督及び主要キャストのみなさんの、“気が変わる”ことを切に願う。
■公開情報
『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』
全国公開中
出演:北村匠海、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮、永山絢斗、村上虹郎、高杉真宙
原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社『週刊少年マガジン』連載中)
監督:英勉
脚本:髙橋泉
配給:ワーナー・ブラザース映画
©和久井健/講談社 ©2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会
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