『らんまん』あいみょんが歌う「愛の花」はどの瞬間にも調和する 「蛍の光」との共通点も

 最初は主人公・万太郎(神木隆之介)の妻となる寿恵子(浜辺美波)の目線を意識して紡がれたという「愛の花」の歌詞。だが、あいみょん本人も「広末涼子さん演じる万太郎の母・槙野ヒサさん目線の曲にもなったなと、ドラマを観ていて思った」と語っているように、今改めて聴くとこれまで登場した様々な人物の顔が頭に浮かぶ。(※)

 それこそ姿は見えずとも子供たちを見守ってくれているであろうヒサや、子供の頃の万太郎に「無駄な命など一つもなく、誰しも自分の務めを持って生まれてくる」と教えてくれた龍馬(ディーン・フジオカ)、学問所で好きなことを学ぶ楽しさを伝えた蘭光先生(寺脇康文)、国民の自由と権利を訴え、女だからと酒蔵に入ることさえ許されなかった綾(佐久間由衣)の心を震わせた逸馬(宮野真守)や喜江(島崎和歌子)、万太郎が植物学の道に進むか峰屋の当主として生きるかを迫られた時に過去の後悔を語った万次郎(宇崎竜童)、心のままに生きろと寿恵子の背中を押してくれたクララ先生(アナンダ・ジェイコブズ)らの顔が。彼らはもうこの物語に登場することはないかもしれない。だけど、彼らがやってきたことは「新しい花の種」となった。花を咲かせるのは万太郎や綾、寿恵子など、旧時代の身分にとらわれる必要のない新時代を生きる者たちである。そんな彼らへのエールとほんの少しの寂しさ、そして「空が晴れたら逢いに逢いに来てほしい」と再びどこかで出会えることを願う気持ちが「愛の花」には込められているように思うのだ。

(左)槙野万太郎役・神木隆之介、(右)槙野タキ役・松坂慶子

 そして、前半戦のクライマックスを迎えようとしている今、この曲が寄り添うのは万太郎の祖母・タキ(松坂慶子)の人生だ。寿恵子を連れて久しぶりに故郷へ帰った万太郎は、そこでタキの身体が病で日に日に弱っていることを知る。タキはコロリで夫と息子、その妻であるヒサを病で早くに亡くし、万太郎と綾、さらには峰屋の看板と従業員を守り続けてきた。そのために自分の願いをグッと胸に仕舞い込んだことがきっと何度もあっただろう。だけど後悔はしていないであろう彼女の心境を「私は決して今を今を憎んではいない」という歌詞が代弁しているようだ。自分に残された時間があとわずかであることを自覚しながらも、「そばにいてほしい」というたった一つの願いすら伝えず万太郎を再び送り出そうとしているタキ。人は誰しもいつかは死を迎える。だが、いつでもその存在を思い出せるように、逢いに行けるように、せめて万太郎が何度もタキと見に訪れたヤマザクラの木は切り倒されることなくそこにあってほしい。

あいみょん – 愛の花【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

参照

※ https://natalie.mu/music/pp/aimyong08

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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