『王様に捧ぐ薬指』は最も“裏切られた”春ドラマに 秀逸だった作り手たちの“楽しむ力”
気づくと、TVer再生回数は『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)に次ぐ2位を稼ぎ出し、いわゆる満足度調査などの評価もグングン上昇。しかも、SNSの反応を見ると、主な声は相変わらずひたすら2人の美しさかわいさを絶賛するコメントばかりだ。
しかし、「かわいさ」「美しさ」だけでこんなにも毎週視聴者を引っ張り続けられるのだろうか。そこには2人の間で積み重ねられていく「家庭内のルーティン」や、得意な料理を東郷が作るといった夫婦の役割分担、そして橋本が演じる綾華の飾らないキャラクターや、「ツンデレ」のはずなのに、途中からは好きな気持ちを全く隠せていない、ツン薄め・デレ全開の山田演じる東郷のキャラクターが視聴者に愛されたことが大きく影響しているだろう。
2人のやりとりを見ていると、つい笑顔になってしまったり、温かい気持ちになってしまったりする……結論から言うと、原作に近いイメージの“大人”カップルを起用しなかったのは正解。清潔感と華やかさ、明るさのある橋本&山田の「ミッキー&ミニー」カップルだったからこそ、「キスルーティン」をはじめとし、盛りだくさんのイチャイチャシーンにもお茶の間的気まずさが生じず、安心して笑い、楽しめた人はたくさんいたのだろう。
今は配信ドラマなど選択肢が増え、ネットで手軽に情報を得ることができることから、視聴者の観る目も肥えて、要求も高くなっている。そうした時代に、時代性や豊富な情報量、緻密な構成、繊細な心理描写などは一切なく、とことん王道展開で「愛すべき人々」を笑いたっぷりに正面から描いた「かわいい」一点突破のラブコメ『王様に捧ぐ薬指』。
回を重ねるごとにファンが増え、評価が高まっていったのは、作り手の潔い戦略と、それを受け止め、一丸となったキャストたちの“楽しむ力”の功績だろう。
■配信情報
火曜ドラマ『王様に捧ぐ薬指』
TVer、Paraviにて配信中
出演:橋本環奈、山田涼介、坂東龍汰、長尾謙杜(なにわ男子)、小林きな子、若月佑美、三浦獠太、小林涼子、田仲陽成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)、高橋奏琉(ジャニーズJr.)、宮崎莉里沙、塚地武雅、利重剛、りょう、松嶋菜々子
原作:『王様に捧ぐ薬指』わたなべ志穂(小学館プチコミックフラワーコミックスα)
脚本:倉光泰子、関久代
演出:坪井敏雄、泉正英、宮崎萌加
プロデューサー:橋本梓、勝野逸未
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
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