『どうする家康』での勝頼役は、『エルピス』の若手ディレクター役と『東京リベンジャーズ』の友情に熱い不良役の中間に位置するようなキャラクターだといえるかもしれない。いまとは時代が違うのだから、“等身大の演技”というものは成立しないのだろうし、かといってあまりにもフィクショナルな勝頼像を立ち上げてしまっては歴史劇のリアリティラインからはみ出してしまう。演技のさじ加減はじつに難しいところだろう。しかも勝頼の場合は途中からの登場なうえ、亡き父の遺志を継いで人々の先頭に立たねばならない。つまり眞栄田はすでにできあがっている世界観の中に踏み込むだけでなく、その世界の中で生きる人々を演じる俳優たちを率いねばならない重責を担っているのだ。すでに十分な貫禄で画面越しに私たちを圧倒している眞栄田だが、これをやり遂げてこそ開ける道があるのだろう。

　徳川家康の息子・信康を演じる細田佳央太と、武田信玄の息子・勝頼を演じる眞栄田郷敦。本作の中でもとりわけ若い二人は、役どころも演技も好対照だ。戦国時代と違い、それぞれのポジションに相応しい者がより“適材適所”で“役”を得られるのが令和の時代のように思うが、こと若手にかぎっては、「俳優戦国時代」である。すでに若手では関水渚や伊東蒼らが大きな功績（あるいは爪痕）を残していったが、細田と眞栄田は初めての大河ドラマで何を残していくのだろう。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00～放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00～放送
主演：松本潤
脚本：古沢良太
制作統括：磯智明
演出統括：加藤拓
音楽：稲本響
写真提供＝NHK