『ザ・フラッシュ』はヒーロー映画とは思えない? 1人2役演じ分けたエズラ・ミラーの功績

 一方で、意外な収穫なのがバットマン役の俳優たちだ。久々の登板が話題のマイケル・キートンもイイが、個人的にガッツリとハートを掴まれたのが、ベン・アフレックのバットマンだ。オープニングで往年のシュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)ばりに「主役はオレだ!」と言わんばかりのカッコいい大活躍を見せてくれる。正直ここだけでも映画館で観る価値があったとすら思った。ベンアフ的にはバットマンは引退らしいが、見事に有終の美を飾ったと言っていいだろう(この感じで、あと2~3本くらい観たいけれども)。

 最後になってしまったが、もちろん監督のアンディ・ムスキエティの手腕も忘れてはならない。『MAMA』(2013年)や『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)などを手掛けたホラー畑の監督だが、一方でウェットなドラマにも定評がある人物だ。今回もその手腕を存分に発揮している。

 複雑かつ奇妙に広がった風呂敷を、本作の作り手たちは努力と技量で(可能な限りは)綺麗に畳んでみせた『ザ・フラッシュ』。スーパーヒーローたちの大決戦を期待すると少し肩すかしをくらうかもしれないが、ヒーローとしての使命と、1人の人間としての願いのあいだで葛藤する者たちの姿を見たいと思うなら、きっと本作はハマるはずだ。

■公開情報
『ザ・フラッシュ』
全国公開中
監督:アンディ・ムスキエティ
出演:エズラ・ミラー、ベン・アフレック、マイケル・キートン、サッシャ・カジェ、マイケル・シャノン
配給:ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト:flash-movie.jp

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