スパイダーマンの“カノン”とは? 『アクロス・ザ・スパイダーバース』見どころ徹底解説

 こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のマーベル、DCのアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします! 今日はいよいよ6月16日に公開された『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の見どころ解説です。

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』とは?

 2018年(日本公開2019年)に公開され、アカデミー賞のアニメ部門を制した『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編です。スパイダーバースとは、スパイダーマンを起点にしたマルチバースの捉え方。様々な世界(バース)に、その世界ごとのスパイダーマンないしスパイダーマンに該当するヒーローがいる(例えばある世界ではスパイダーマンではなくスパイダーウーマンが活躍)。そして時空を超えて違う世界のスパイダーマンたちが共演します。前作はマイルス・モラレスくんという青年がスパイダーマンになる運命を背負い、そこに別バースのスパイダーマン、ピーター・B・パーカー、スパイダー・グウェン、スパイダーマン・ノワール、ロボットを操るペニー・パーカー、スパイダー・ハムが現れます。今回は、スパイダー・グウェンに導かれマイルスは他のバースを旅するという展開になります。そして前作とは違うキャラたちがマイルス版スパイダーマンの前に現れます。彼らを紹介しましょう。

注目はこのキャラたち

 まず主人公のマイルスは、Earth-1610という世界の住人です。そして、彼と冒険をともにするスパイダー・グウェンはEarth-65の住人です。ただ正確に言うと“スパイダー・グウェン”という名のヒーローはいません。グウェン・ステイシーという女の子がEarth-65でスパイダーマン的ヒーローとして活躍しており、この世界では“スパイダーウーマン”と呼ばれています。ただわかりやすいように“スパイダー・グウェン”という表記をしています(なお、この世界のグウェンが最初に入ろうとしていたガールズ・バンドの名前は“メリー・ジェーンズ(バンド)”。よーく見るとグウェンが叩くドラムにメリー・ジェーンと書かれています)。

 そして、マイルスとグウェンに絡んでくるのは、スパイダーピープルは以下の通り。

ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099

 Earth-928の住人。2099年の未来で活躍するスパイダーマン。NYの街はヌエバヨークと呼ばれています。前作『スパイダーマン:スパイダーバース』の最後に登場。この映画では全スパイダーバースの秩序を監視し見守っています。さらに各バースのスパイダーマンたちから選抜メンバーを集め“スパイダーソサエティ”という組織を作っています。

 青ベースのコスチュームで手には鋭い爪があり、初めてグウェンが彼と会ったとき、「あんた、ブルーパンサー?」とからかわれました。

 原作コミックではもともと未来のヒーローたちを描くミニシリーズ『Marvel 2099』の中に登場した未来のスパイダーマンです。遺伝学者ですが、スパイダーマンの遺伝子を研究している際、事故で自分がその力を身に付けてしまいます。

ジェシカ・ドリュー/スパイダーウーマン

 Earth-404の住人。バイクに乗ったスパイダーウーマンとして活躍。実は原作コミックではこのキャラはちょっと複雑で、もともとスパイダーマンとは関係のないヒーローでアベンジャーズのメンバーでした。またヒドラや『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』にも出てきたハイ・エボリューショナリーとも関りがあります。

 また、別バースではピーター・パーカーのクローンという設定もありました。今回はジェシカ・ドリュー/スパイダーウーマンという名前だけ借りた、この映画オリジナルのスパイダーウーマンと考えた方がよさそうです(原作コミックでは黒人女性ではない)。なお、このスパイダーウーマンはマスクで顔を隠していないですよね。ということはEarth-404ではみな、彼女の正体を知っている=正体を隠さず活躍しているのかな?

パヴィトル・プラパカール/スパイダーマン・インディア

 Earth-50101の住人。インディアの名の通りインドのスパイダーマン。ムンバイとマンハッタンをあわせたようなムンバッタンの街で活躍します。

 もともとマーベルがインド市場の開拓のために、現地のメディアと組んでインド版スパイダーマンを作ったことがありました。2004年のことです。そういう意味で、東映版スパイダーマンと近いビジネスモデルで生まれたキャラということになります。

 原作コミックでは特殊な蜘蛛に噛まれたのではなく、シャーマン(呪術師)の力で蜘蛛の力を得たというオカルトチックな設定です。『RRR』などインド映画が世界のエンタメ市場で注目されているので、そういう影響もあってインド発のスパイダーマンがフィーチャーされたのかもしれません。

ホービー・ブラウン/スパイダーパンク

 Earth-138の住人。イギリスっぽいですが、原作コミックではアメリカのスパイダーマンです。

 彼の世界のアメリカ、ニューヨークはファシストに牛耳られています。なんと大統領はノーマン・オズボーン(そう! グリーン・ゴブリンの正体ですね)。この圧政に反骨精神とロック魂で立ち向かいます。プレイステーションのゲームでこのコスチュームが使えたり、とてもキャッチーなのでコスプレする人も多い人気キャラです。

 こうした個性豊かなスパイダーピープルたちが大活躍します。本作の見どころは、各キャラの世界観に合わせ、アートのトーン&マナーをかえていること。こういうコラージュ的な楽しさも『スパイダーバース』の魅力です。

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