『らんまん』奥田瑛二&鶴田真由が江戸の人情を体現 寿恵子を迎えに行く手はずが整う
『らんまん』(NHK総合)第54話では、ついに万太郎(神木隆之介)たちの植物学雑誌が完成した。
日本初の植物学雑誌創刊に向けた作業もいよいよ大詰めに入り、万太郎は石版に印刷用の絵を描く。波多野(前原滉)と藤丸(前原瑞樹)は夜を徹して校正に励み、大畑(奥田瑛二)たちが見守る中、図版を1枚ずつ仕上げていく。ものづくりの昂揚感は教室内に広がり、徳永(田中哲司)や野宮(亀田佳明)もポジティブな空気を感じていた。
そうやって完成した「日本植物学雑誌」創刊号は、製本されたばかりの紙とインクの香りが画面から伝わってくるようで、植物学教室の面々は、自分の書いたページを目にして満足の笑みを浮かべる。万太郎の図版は徳永が驚くほど精緻なもので、野宮も「植物学者の絵」と称賛した。
祝賀ムードに水を差したのが教授の田邊(要潤)だ。「たかが雑誌」と突き放す田邊だったが、雑誌の仕上がりに満足し「私が雑誌を思いついたからこそ、こうして形になったわけだ」とのたまった。驚愕の発言である。皆の血と汗と涙の結晶であり、万太郎なくして雑誌の創刊にこぎつけられなかったことは、その場にいる誰もが知っている。それでも、絶対的な力を持つ田邊に異論を唱えることはできなかった。
万太郎は田邊の発言を受け入れる。成果を献上した形になるが、万太郎の立場を考えれば仕方ない部分もある。学生ではない万太郎に植物学教室への出入りを許し、客分でありながら学会誌の発行に携わることができるのは破格の待遇と言える。それでもどこか釈然としないのは、私たちが「出来が悪ければ燃やす」と話した田邊のもう一つの顔を知っているからだろう。
とにもかくにも、田邊によると「日本の植物学はやっと芽が出たと世界に知らせるいい機会」であり、万太郎は大きな一歩を刻むことができた。そうなると頭に浮かぶのは寿恵子(浜辺美波)のことだ。当の万太郎自身にとって、片時も心を離れることはなかったに違いない。宴の席で大畑と妻のイチ(鶴田真由)に「大事なお話」と切り出した。