『ペンディングトレイン』主題歌「TATTOO」が後半の物語にも影響? 宮﨑Pに聞く制作秘話

『ペンディングトレイン』宮﨑Pに聞く舞台裏

 小説や漫画など原作を持つ作品が増えオリジナルドラマ制作のハードルが上がってい中、そのハードルを飛び越えるために“挑戦”をし続けたドラマが金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系)だ。電車の2車両がまるごと“ペンディング”された世界に飛ばされてしまうという異色の設定を制作陣はどう物語として落とし込んでいったのか。最終回まで残りわずかとなったタイミングで、プロデューサーの宮﨑真佐子に話を聞いた。(編集部)

“全シーン”に魂を感じる山田裕貴の芝居

ペンディングトレイン 日向亘 山田裕貴

――SNSでは考察が盛り上がっていますが、予想外だったものはありますか?

宮﨑真佐子(以下、宮﨑):結構、予想外の考察が多いです。北千住殺傷事件の新聞記事を第1話からずっと振ってきて、それを見ている玲奈(古川琴音)や和真(日向亘)のカットを意味深に入れていることもあり、「実は和真や玲奈がこの事件に関わってるんじゃないか」といった考察を目にして、あまりそれは意図してなかったので、申し訳ないなっていう気持ちにはなりました(苦笑)。でも、「あそこで目線を送ったから」とか、そこまで詳しく観てくれてるんだと嬉しく思っています。

――キャストのみなさんと、世間の反応についてはどんなお話をされていますか?

宮﨑:「顔の汚れが少ない」といった声もあるようで、それに対して「そんなことなくない!?」みたいなことは結構みんな言ってました(笑)。リアルにサバイバルをしているので、ここで言わせてください。リアルな汚れです! 髭のことも言われていますが、髭を剃ってるシーンもあります!(笑)

――過酷な現場かと思いますが、台本での想像と違ったことありましたか?

宮﨑:もう全部が大変すぎて麻痺してきてしまっているんですけど、なんだろう……想像よりも虫が多い(笑)。あとは最近、「床が平らだと落ち着かない」とよく話していますね。キャストの方も言ってますけど、スタッフもそうで。この前、久しぶりに会社の中のシーンがあって、綺麗な会社をお借りしてロケをしたら「もう、どうやって居たらいいかわからない」みたいな(笑)。「イスと机があるときって、どうやって撮るんだっけ?」くらいのところまで、キャストもスタッフもきています。

――(笑)。ちなみに、虫によるNGもあったりするのでしょうか?

宮﨑:虫NGは結構あります。もちろん撮り直すこともありますけど、どうしても撮り直せないときにはCGで消しています。

――これまでの撮影で、「このチームだから成立したな」と感じた出来事はありますか?

宮﨑:最初の第1話、第2話はギスギスしているシーンが多くて、第3話~第7話とストーリー的にも団結していく。6号車という敵ができることによって、逆に5号車がまとまるようなエピソードもありますが、撮影をどんどん積み重ねてきたからこそ、キャストたちも「この人ならこう行動するだろう」と感覚的にわかるようになって、すごく連帯感が生まれている感じがします。初共演の方がいっぱいいらっしゃったことで、むしろ最初のギスギス感が出せて良かったですし、だんだん仲が深まっていくにつれ、連帯感が出るようなお芝居もできているなと。本当にドキュメンタリーのように、そういうものが積み重なった感じがしています。特に、山田(裕貴)さんと赤楚(衛二)さんは敵対しているところから始まって、今はバディのようになっている。ご本人同士も初共演からここまで数カ月一緒にやってきて、オフのときにもすごく仲がいいので、それは良かったなと思いますね。

ペンディングトレイン 赤楚衛二

――とくに連帯感を感じたシーンは?

宮﨑:2個あって、ひとつは第3話の乗客全員でご飯を食べるシーン。第3話は「5号車の人たちが団結し始める」というのが裏テーマの回で、それぞれが動き出した描写がありつつ、キャンプファイヤーで初めてみんな一緒にご飯を食べるんです。そこで、“田中さんが毒を入れたかもしれない”ということから起こる直哉(山田裕貴)と優斗(赤楚衛二)のぶつかり合いは、台本で読んだイメージよりも盛り上がったというか。今まで第1話~第3話と踏んできたからこそ生まれている、第1話、第2話とは違うぶつかり合いになっていて、それがすごいなと思いました。あとは第6話の戦闘ですね。全員、「戦うべきか、戦わないべきか」というところから、みんなが戦ってしまう。そして、米澤(藤原丈一郎)がそれを止めるシーンには、やっぱり胸が熱くなりました。

――「この方にこの役柄をお願いしてよかった」と感じたエピソードはありますか?

宮﨑:古川琴音さん演じる玲奈は本当に難しい役だと思いますが、第3話で紗枝(上白石萌歌)と恋バナをして、「顔だったら萱島直哉なんだけど」と言ってからの、「顔だけかよ」っていう流れが秀逸だなと、現場で監督とも話していました。それから、藤原くん演じる米澤との絡み方。水と油じゃないですけど、ただ仲が悪い2人のケンカじゃなくて、この2人のケンカがちょっと見たいとか、楽しみになるくらいの感じが出ていて。藤原くんとの相性もあると思いますが、見ていてすごく面白いですし、古川さんが想像よりもキャラクターを立たせてくれたなと思っています。

――山田さんのお芝居に助けられたと感じたシーンも教えてください。

宮﨑:これはお世辞でも何でもなくて、全シーンいいんですよ。全シーン、魂を感じるというか。全シーンいいんですけど、美容師免許を取って、初めてハサミを触る回想シーンでは、嬉しいだけじゃなくて、今まで大変だった中で勝ち取った美容師免許、そしてハサミだということが表現されていました。台本のト書きでは“ハサミを取って握る”くらいにしか書かれていなかったのですが、ハサミを手に取って泣いて喜ぶんですよね。まだ撮影の序盤だったのですが、直哉ってこういう人なんだと教えられた気がしました。

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