世界中で愛された名作が映画館で蘇る! 純粋な心を思い出させてくれる『プチ・ニコラ』
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、湿気から前髪を全力で守る女子大生・佐藤が『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』をプッシュします。
『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』
フランスで50年以上愛される児童書『プチ・ニコラ』を初めてアニメーション映画化した本作。『プチ・ニコラ』はジャン=ジャック・サンペがイラストを担当し、友人のルネ・ゴシニがストーリーを考え、イタズラっ子の小学生の男の子ニコラを主人公にした物語である。そして、ニコラを中心に展開していく物語にフランスらしいユーモアのエッセンスが加えられている。
オープニングから背後に流れる爽やかな音楽と、水彩画のような優しいタッチで描かれるフランスの街並みに心掴まれた私は、一気にニコラの物語に引き込まれてしまった。ルドヴィック・ブールスが手掛けた音楽の表現力が映画のストーリーとマッチしており、イラストで描かれる『プチ・ニコラ』の世界をより深く理解できるものにしていたのが印象的だった。
そして、何より興味深いのが、『プチ・ニコラ』を創造したサンペとゴシニの2人の幼少期時代。イラストレーターのサンぺは両親の喧嘩が絶えない家で育ち、経済的にも苦労して育っており、14歳で学校に行くのをやめている。ストーリーの考案を担当したゴシニは、パリでポーランド出身のユダヤ教徒の子として生まれ、少年時代にはホロコーストにより親族を亡くしているそう。そんな2人が初めて出会ったのは、サンぺが18歳の時に初めて新聞にデザインが載ったのをきっかけにフランスへ行ったときのこと。新聞社に自分のイラストを売りこんでいたサンぺとシナリオ作家のゴシニが運命的な出会いを果たし、『プチ・ニコラ』が誕生したのだ。
『プチ・ニコラ』は、“暗い”子ども時代を過ごした作者たちだからこそ描ける“優しい”物語なのだと私は感じた。また、2人は自分が得られなかった普通の幸せな少年時代をニコラを通して追体験しているようにも見えた。