『天国大魔境』視聴者を引き込む世界の美しさと絶望感 原作の魅力を倍増させたアニメ化に

 自作の漫画や小説がアニメ化されると、放送に対してリアクションする作家は往々にしているが、本作の原作者・石黒正数もそんなひとりだ。アニメ化が発表された時のコメントに「滅び朽ちた日常風景の荒涼とした美しさや絶望感を描き出す手段としてはアニメが最も向いていると思っていました」とテレビアニメに期待を寄せていることを明かしたが、これがリップサービスではないことが、毎週の放送ごとに作者のTwitterでの発言で確認できる。

 宇佐美と名乗る医師を中心に、登場人物の情感的な芝居が多かった第8話については特に言及が多く見られ、「泣くがな!こんな…! 演出と特殊ED曲の歌詞で3回くらい泣いちゃったじゃないですか!」(5月20日)や、「この宇佐美の顔はアニメ史に残るとまで思う」(5月25日)の発信を見ると、アニメ化に十分な満足感があったことが伝わってくる。Production I.Gのスタッフがいかに原作漫画を丁寧に映像化しているかが分かろうというものだ。

 エンディングテーマ『誰も彼も何処も何も知らない』は、第8話のためにアコースティックなアレンジの別バージョンが放送され、これもまた視聴者の感動を呼んだ。エンディングは毎週流れるASOBI同盟のヴォーカル版の他に、メインキャストの2人(マル役の佐藤元とキルコ役の千本木彩花)が歌う特別版も録音されており、映像だけでなく楽曲面にも力が入っている。

TVアニメ『天国大魔境』ノンクレジットED映像(特別版)|マル(CV. 佐藤元)&キルコ(CV. 千本木彩花)「誰も彼も何処も何も知らない」

 テレビアニメは、子どもたちがいる高原学園内部で、トキオの妊娠が発覚し、マルとキルコが廃墟になった高原学園の支部跡地を発見したりと、ドラマが大きく動き出した。原作漫画はまだ連載が継続中だが、アニメはどういう落としどころに辿り着くのか。石黒正数の原作の持ち味を活かしながら、アニメ化によって何倍も魅力が増している『天国大魔境』。原作もアニメも、2人の旅の行方から目が離せそうもない。

■放送・配信情報
『天国大魔境』
TOKYOMX、RKB毎日放送、BS11ほかにて放送中
ディズニープラスにて全世界独占配信
原作:石黒正数 『天国大魔境』(講談社『アフタヌーン』連載)
監督:森大貴
シリーズ構成:深見真
キャラクターデザイン:うつした(南方研究所)
ヒルコデザイン:古川良太
プロップデザイン:富坂真帆、澤田譲治
銃器デザイン:髙田晃
メカデザイン:常木志伸
色彩設計:広瀬いづみ
美術監督:金子雄司
美術設定:ブリュネ·スタニスラス/伊井蔵、上田瑞香、平澤晃弘、高橋武之
3D:directrain、IG3D、5(fivek)
モーショングラフィックス:大城丈宗
2DW:CAPSULE、濱中亜希子
撮影監督:脇顯太朗
編集:坂本久美子
音響監督:木村絵理子
音楽:牛尾憲輔
アニメ―ション制作:Production I.G
製作:天国大魔境製作委員会
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
公式サイト:https://tdm-anime.com/
公式Twitter:@tdm_anime

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