『日曜の夜ぐらいは...』は心を満たしてくれる 改めてスタートしたサチ、翔子、若葉の人生

 家族の中で存在を抹消されている翔子は、兄・敬一郎(時任勇気)から遺産の放棄を提案され、やり場のない思いと寂しさを抱えていたが、心配したサチが飛んできてくれたこの夜を一生忘れないと幸せそうな顔を見せた。

 変化の連鎖は続く。かつて住んでいた豪邸への執着を振り払えた祖母・富士子(宮本信子)は、ついに東京に行きたいと言い出した若葉に、自分も一緒について行くと言ってとすぐに快諾し、その背中を大きく押した。散々若葉にいわれなき理不尽な嫌がらせをし続けてきた、ちくわぶ工場の社員たちと社長にこれまで溜めに溜めてきた怒りをぶつけるも、最後は若葉なりのエールを送る。正々堂々とした彼女はカッコよく清々しかった。「ここが自分の居場所じゃない」とあっさり手放せた若葉の姿こそ、そんな人間たちへのある意味最大の仕返しだろう。そして孫が皆の前で啖呵を切るのを小気味良さそうに笑いを堪えながら見守る富士子と、この2人の関係性がずっと素敵だ。さらに、そんな若葉の勇姿をいつもの彼らの“お疲れ様”が迎え入れ、包み込む瞬間の心強さと言ったらない。

 どうしたって上手く周囲と溶け込めきれなかった3人が、同じく会社の同僚の間で浮いてしまっているみね(岡山天音)を“仲間”として迎え入れ、経理担当に任命した。若葉は「人生は信用できる人と出会うための長い旅」とまた真理を突いたが、そういう意味では彼らの人生はここから改めてスタートしたと言えるだろう。とりあえずみねの管理下に全財産が置かれたことで、娘のお金をあてにするサチの父親(尾美としのり)や若葉の悪魔のような母親(矢田亜希子)から彼らの大切な希望やこれからが強奪されてしまうことはなさそうで一安心ではある(もちろん油断は禁物だが……)。

 人が誰かにとっての“特別”になっていく過程に、そしてそんな存在を得られたことで各々が自身も思いもよらなかった力を発揮していくさまに立ち合わせてもらえる本作は、静かにこちらの心を揺さぶり、満たしてくれる。

■放送情報
『日曜の夜ぐらいは...』
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜22:00〜放送
出演:清野菜名、岸井ゆきの、生見愛瑠、岡山天音、川村壱馬(THE RAMPAGE)、やついいちろう(エレキコミック)、今立進(エレキコミック)、椿鬼奴、飛永翼(ラバーガール)、橋本じゅん、和久井映見、宮本信子ほか
脚本:岡田惠和
演出:新城毅彦、朝比奈陽子、高橋由妃、中村圭良
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー    山崎宏太、山口正紘、郷田悠(FCC)、浅野澄美(FCC)
制作協力:FCC
制作著作:ABCテレビ
©︎ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/drama_22_abctv/
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