『らんまん』は“衣装の変化”が多くを物語る 神木隆之介のオープニングの服装は何を表すのか

『らんまん』は“衣装の変化”が多くを物語る

 東京編が開幕し、3週目を迎える連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)。東大の植物学教室に通い始めた万太郎(神木隆之介)に続き、竹雄(志尊淳)は洋食屋でボウイとして働き出し、寿恵子(浜辺美波)は鹿鳴館で行われる舞踏会に出かける。主要人物の人生が大きく動き出す今週は、衣装の変化も一つの見どころだ。

 生まれによって先の人生が決まる身分社会が変化するタイミングと同時に、由緒正しき造り酒屋の跡取り息子としての自分に別れを告げ、心から望む人生を歩み始めた万太郎。そして、舞台が高知から東京に移り変わったことを観る人に伝えるのが、人々が身につけている服装である。万太郎が上京してきた明治初期の東京はまだ和装が主流。庶民の多くが以前と変わらず、着物姿で生活していた。

 ただ、1872年には「礼服ニハ洋服ヲ採用ス」という太政官布告が出され、和装礼服が廃止に。そのため、公の場に赴くことが多い政府高官など、上流階級の男性たちから少しずつ洋装スタイルに変わっていった。

 例えば、万太郎の周りでは、政府機関で働く佑一郎(中村蒼)や野田(田辺誠一)先生方、アメリカ帰りの田邊(要潤)ら東京大学の教授や講師たちはすでにスーツを着こなしている。一方、東大に通う学生たちの服装も興味深い。彼らは丸首シャツの上から着物に袴、下駄履きのいわゆる“書生スタイル”。書生とは他人の家にお世話になり、家事や仕事を手伝いながら勉学に励む学生を意味する。つまりは苦学生なので高価なスーツを着ることはできないが、洋装への憧れや、自分たちが高等教育を受けていることの自負もあって、そうした和洋折衷のファッションを纏っていたところもあるのだろう。

田中哲司、前原滉、前原瑞樹 『らんまん』を彩る植物学教室の曲者俳優たち

現在放送中の連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)。万太郎(神木隆之介)はいよいよ憧れの東京大学植物学教室へと向かう。東京編に…

 和洋折衷といえば、ほとんどの人が着物姿だった高知でも先取りしていた人物が2人いた。一人は万太郎が幼い頃に出会った“天狗”こと、坂本龍馬(ディーン・フジオカ)。彼は袴の上からマントを羽織り、それをブローチで止めていた。当時としては最先端のファッションだったはずだ。史実として坂本龍馬がマントを羽織っていたかはわからないが、肖像写真で観る限りは袴にブーツを合わせていることが多い。

 実は日本で初めてブーツを履いたのが坂本龍馬と言われており、一説によれば長州藩の高杉晋作からプレゼントされたものだという。単に新しいもの好きだったというのもあるだろうが、脱藩して土佐藩から追われ、外国に負けない日本を作るべく奔走し続けた坂本龍馬のことだ。悪路をものともしないほど丈夫で耐久性に優れたブーツを気に入ったのではないだろうか。

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