乃木坂46 久保史緒里、『どうする家康』で確かな存在感 舞台で獲得した説得力が花開く
『どうする家康』(NHK総合)の第17回より、かねてから登場が待ち望まれていた乃木坂46の久保史緒里が五徳役で出演を果たした。これまで乃木坂46の卒業生として深川麻衣が『青天を衝け』(NHK総合)に出演したことはあったが、現役メンバーでそれも単独出演となると久保が初めて。それだけでも快挙であり、久保にかかる期待の大きさを物語っている。
2023年2月には1期生の秋元真夏、3月には2期生の鈴木絢音が卒業したことによって、乃木坂46は3期生が最古参となった。3月29日には新体制となった乃木坂46が32ndシングル『人は夢を二度見る』をリリースしたが、そこでダブルセンターを務めたのが山下美月と、久保の“くぼした”コンビだ。山下は『舞いあがれ!』(NHK総合)でヒロインの幼なじみという大役を演じ、久保もまた『どうする家康』への出演が示しているように、グループの枠を超えて幅広い世代に知れ渡るという意味で2人は大きな役割を担ってきた。転換期を迎えたグループにとって、今回の久保の大河ドラマ出演の意義は非常に大きい。
山下美月&久保史緒里が朝ドラと大河に辿り着くまで “くぼした”が乃木坂46の顔に
乃木坂46の久保史緒里が、2023年1月8日よりスタートする大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)に出演することが発表された。…
遡れば、2017年に開催された3期生にとっての初公演『3人のプリンシパル』の演技審査で見せた久保の表情が忘れられない。初めての演技ということで、もちろん緊張もあったと思うが、それをかき消してしまうくらい振り切った演技、そして目線の動かし方に惹かれた。実際に久保は15公演のうち11公演で第二幕に出演し、千秋楽公演の『銀河鉄道の夜』ではカムパネルラを好演してみせた。
加入初期から演技力に定評のあった久保は、舞台『三人姉妹』(2018年)やミュージカル『美少女戦士セーラームーン』(2019年)などで経験を積みながら、2021年には『クロシンリ 彼女が教える禁断の心理術』(カンテレ)にて連ドラ初主演を務めた。ブラックユーモアがあり、所々にダークな一面が垣間見られる同作で、久保は重要な局面で登場するクロノサキを演じ、ドSで毒舌というクセのある役を高い解像度で表現した。正直なところを言えば、これまでの久保の臨場感のある演技などを観ていても必ずしもドラマ向きではないのではないかと思っていたのだが、同作での演技でその思い込みはいい意味で覆された。久保のキャリアの中で見過ごされてしまいがちではあるが、ドラマにもしっかりと適応してみせたという点では重要な作品になったことは間違いない。
とはいえ、やはり舞台での活躍は外せない。2021年6月に上演されたヨーロッパ企画の上田誠が手掛けた『夜は短し歩けよ乙女』ではおかっぱ頭がトレードマークの快活で自由奔放な黒髪の乙女をいきいきと演じてみせると、2022年に上演されたパルコ・プロデュース2022 舞台『桜文』では、耽美な佇まいで桜雅花魁/笹沖雅沙子役という大役を演じ、舞台俳優としての経験値を積み上げていった。中でも『夜は短し歩けよ乙女』の劇中で披露したポエトリーラップは、久保の凛とした歌声も相まって、忘れられないワンシーンとなっており、再演を望む声も多い。この2作を見た時に、改めて久保は舞台で輝きを放つ俳優なのだと思わされた。