『医師チャ・ジョンスク』は人生100年時代の成長譚 キム・ビョンチョルが愛されキャラに

 4月15日からNetflixで配信中の韓国ドラマ『医師チャ・ジョンスク』が人気となっている。韓国での視聴率も第1話4.9%でスタートし、第6話で13.3%を記録した(ニールセンコリア調べ)。

 本作は、主演のオム・ジョンファ演じる、元医師で20年間専業主婦だったチャ・ジョンスクが、医師として再復帰し、レジデント1年目から奮闘する姿を描いた成長物語だ。チャ・ジョンスクは、良妻賢母として、夫と姑、一男一女の5人暮らしを支える専業主婦。自分のことは顧みず、家族のために身を粉にして働く日々を過ごしていた。しかし、そんなある日、ジョンスクは粗悪な民間療法の薬によって重篤な状態に陥り、肝臓移植が必要な状態になってしまう。

 オム・ジョンファは、“韓国のマドンナ”と呼ばれ、歌と演技の両方で高く評価されている。年の差恋愛を描いたドラマ『魔女の恋愛』では、年下のパク・ソジュンに翻弄されるキャリアウーマン役で人気を博した。本作では、家庭のために自分を犠牲にして生きてきた女性が、死の淵から生還し、自分のために人生を生き直す姿を、生き生きと演じている。オム・ジョンファ演じるチャ・ジョンスクの真っすぐで健気な姿が、とてもいじらしくて観ていて応援したくなるのだ。

 一家を支えていたジョンスクが、再び医師を目指す背中を図らずも押すことになったのは、夫で医師のソ・イノだ。イノを演じるのは、ヴィランからシリアス、コメディまでオールラウンドプレーヤーの演技派キム・ビョンチョルだ。キム・ビョンチョルといえば、『太陽の末裔』『ショッピング王ルイ』『雲が描いた月明かり』と人気作で重要なキャラクターを演じ、インパクトを残してきた。

 キム・ビョンチョルの演じたキャラクターの中でも、代表的なヴィランは、『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』でのパク・チュンホンだろう。キム・ミンジェ演じるワン・ヨをそそのかし、怨念を抱えて彷徨い、コン・ユ演じるキム・シンを追い詰め、視聴者を震撼させた。

 さらに、愛されキャラクターで人気となったのは、『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』のチャ教授だ。子供たちを追い詰める熾烈な教育パパを演じ、ピラミッドを偏愛する姿は、一周回ってシュールで面白く、ヴィランから一転、愛されキャラとして大人気となった。さらに『ペガサスマーケット』では、その世界観をスケールアップさせたかのような、“ぶっ飛び社長”チョン・ボクドンとして、シュールな世界観の中で抱腹絶倒のコメディを怪演してみせた。

 そんなキム・ビョンチョルの、憎めなさ満載の演技が、本作でも存分に発揮されている。イノは、外科科長として論文が『ネイチャー』に掲載されるほどのやり手だが、プライベートでは、元カノで同僚のチェ・スンヒ(ミョン・セビン)と不倫中だ。妻であるジョンスクが病に倒れ、肝移植が必要になったときに見せた臆病さや、妻と不倫相手の間で右往左往する姿は、眉を顰めたくなる行動や言動のオンパレードなのだが、不思議とキム・ビョンチョルが演じるとおかしさが醸し出される。人間の弱さや狡さを、“かわいさ”や“滑稽さ”にして、「あの人はしょうがない人だから……」で許されてしまうような、どこか憎めない愛されキャラクターとして演じられるのが、怪優キム・ビョンチョルだ。音楽に合わせてリズムに乗り、肩を揺らしながら、キーボードを鍵盤のように叩く姿に声をあげて笑った人もいるのではないだろうか。

 ジョンスクが、妻として医師として、夫のイノとやり合うシーンがなんとも面白くてたまらず、ジョンスクを応援しながら、イノがどうするのかが可笑しくてたまらない。飲み会の席でジョンスクと目で会話をするところでは、にやにやとさせられる。同僚の医師ロイ・キム(ミン・ウヒョク)の表情がまさにそれを表している。ロイは、ジョンスクと運命的な出会いを果たしたのだが、イノの臆病で卑怯なところや、不倫をしているずるさを知り、夫婦に絡んでいくのも魅惑的であり、この先が楽しみなところだ。

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