庵野秀明も『シン』シリーズで採用? 手塚治虫、石ノ森章太郎の“スターシステム”を解説

 「スターシステム」をご存じだろうか。漫画やアニメの登場人物を俳優や役者に見立てて、様々な作品に登場させるという演出方法だ。あるキャラクターが、ある作品では主役を演じたと思ったら、別の作品では一転して悪役になることもある。作者の作品を知れば知るほど楽しめる仕掛けなのだ。

 漫画界でもっとも積極的に活用したのはご存じ、手塚治虫だろう。ヒゲオヤジやアセチレン・ランプのようにあらゆる作品に出演する名役者は広く知られるし、『鉄腕アトム』のアトムや『リボンの騎士』のサファイアが『ブラック・ジャック』に脇役で出演したケースもあるし、ブラック・ジャックが別の作品で脇役になったケースもある。

 現在公開中の庵野秀明の脚本・監督による『シン・仮面ライダー』にも、「スターシステムが採用されているのではないか」と話題になっている。それは政府の男を演じた竹野内豊の存在にある。竹野内は庵野による『シン』シリーズの常連だ。『シン・ゴジラ』では内閣総理大臣補佐官の赤坂秀樹役を、『シン・ウルトラマン』でもやはり政府の男役として登場している。

 政府の男という役柄で2回出演し、赤坂秀樹も政府の中枢にいた人物である。庵野作品に連続して出演した俳優はほかにもいるが、竹野内は3作品で似た設定を演じている。これは偶然なのだろうか。それとも庵野の強い意図が働いたものなのだろうか。

 実は、『仮面ライダー』シリーズの原作者・石ノ森章太郎もスターシステムを採用した漫画家の一人だ。

 例えば、『ミュータント・サブ』の主人公のサブは、『イナズマン』の主人公・風田三郎など、石ノ森が描く理想の主人公像としてあらゆる作品に登場する。また、石ノ森の遺作となった漫画『HOTEL』の舞台となったホテル・プラトンは、『仮面ライダーBLACK』の作中にも登場する。石ノ森は手塚流のスターシステムの使い手でもあったし、自作同士をリンクさせる手法も巧みであった。

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