『コタローは1人暮らし』“強くなりたい”と願うコタロー 横山裕が気づいた繊細な表情の変化

『コタローは1人暮らし』横山裕が変化に反応

 褒められるのは、うれしい。だけど、褒められ続けると逃げ場をなくしたような気分になることがある。浜崎あゆみの楽曲「A Song for ××」に、<いつも強い子だねって 言われ続けてた/泣かないで偉いねって 褒められたりしていたよ/そんな風に周りが言えば言う程に/笑うことさえ苦痛になってた>という歌詞があるが、“〇〇だから偉いよね”という褒め言葉が、“〇〇しないでね”とプレッシャーをかけられているように感じた経験はないだろうか。“泣かないで偉いね”は、“泣かないでね”に。“本当に強い子だね”は、“弱い姿を見せないでね”に変換されてしまう。もちろん、褒めている本人にはそんなつもりはないだろうし、悪気がないことも分かっている。でも、度を越した褒め言葉は、相手の逃げ道を奪うことになりかねない。

 『帰ってきたぞよ!コタローは1人暮らし』(テレビ朝日系)第2話でも、コタロー(川原瑛都)が同じような状況に陥ってしまった。同級生から余った給食を押し付けられたコタローは、お腹がはち切れそうになっているのに頑張って食べてしまう。すると、「さすが!」「すげえよな!」「かっこいい!」と褒められるものだから、どんどん追い詰められていく。もちろんみんな、コタローを追い詰めたくて言っているわけじゃないからたちが悪い。たくさん食べるコタローに憧れているからこそ、過剰に褒め称えてしまうのだろう。

 また、コタローにはネグレクトを受けていた過去がある。空腹に耐えかねて、飢えをしのぐためにティッシュを食べていた時代があったからこそ、フードロスに敏感になってしまっているのかもしれない。そんなコタローのしんどさに真っ先に気づいてくれたのは、美月(山本舞香)だった。「お腹が出ているのはストレスからくるものでは?」と不安になり、学校で開かれる給食の試食会に保護者として参加してみることに。最初は「おやつの食い過ぎじゃないですか?」と言っていた狩野(横山裕)だが、やっぱりコタローの繊細な表情の変化を見落とすことはしない。

「お前、それうまいか?」
「分からぬ。でも、どうしても止められないのである。食べ物を前にいたすと」

 この会話を聞いた瞬間、少しホッとした自分がいた。人一倍“強くなりたい”と願っているコタローは、周囲に弱さを見せるのが苦手だ。狩野と同じことを同級生から聞かれていたら、「もちろん。うまいぞよ」なんて強がったはず。でも、狩野の前なら正直に「分からぬ」と答えることができる。そんな大人が身近にひとりでもいてくれたら、コタローはきっと強くたくましく生き抜いていけるのではないだろうか。

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